「永野・森田公認会計士事務所 日下武」ビジネスのツボ 第37回
今年も税務申告のシーズンがやってきました。最近は、1人でLLCの会社を設立をされ、自営業を営む個人事業主が増加しているように思います。そこで、今回はこのような会社を設立したときの税務申告方法についてお話をしたいと思います。
LLCとはLimited Liability Companyの略で、大きな利点は二つあります。一つは名前の通り、有限責任、そしてもう一つは二重課税の回避ができるということです。C-corpという会社形態では法人税が課せられるのに対して、LLCは法人税を課せられなくする選択ができます。この選択をしたLLCをDisregarded Entityと呼び、法人税を回避することをパススルーと呼びます。それでは、どうやって税務申告をするのでしょうか。1人でLLCを設立し、Disregardedを選択したときは、法人税務申告書作成の必要はなく、個人税務申告書の中で申告します。細かく言うとSchedule Cといういう個人事業主が、収益と経費を計算する損益計算書(profit and loss statement)のようなものを作成して、それを申告書フォーム1040に添付する形を取ります。
自営業者の経費については、ビジネスに関係する支払いは控除対象になることが多いので、給与所得だけの方と比較すると節税のチャンスが多いかも知れません。
例えば、自宅の一部をオフィスに使用する場合は、規定をクリアすればレント費用の一部が控除できます。接待費なども記録は必要ですが、50%控除が可能な場合が多いです。ビジネス使用時の車のマイレージ計上など他にもいろいろビジネス経費計上の機会はあります。しかし、良いことだけではありません。健康・医療保険料が高くなっていますが、自営業者は会社に払ってもらえないため、かなりの負担になります。この救済措置として、自営業者の健康・医療保険料は100%控除できます。更にソーシャルセキュリティー及びメディケアの税金について、給与の方は雇用主が半分負担しているのに対して、自営業者はSelf-Employment Taxとして全額納めなければなりません。
自営業者への救済措置としてはSelf-Employment Taxの50%について控除が認められています。このように書くと自営業者の方は救済措置が多く、しかも節税の機会が多いように思いますが、気をつけなければならないこともたくさんあります。例えば、外食などの費用を公私混同しがちになる方が多いので、IRSが注意し、給与所得だけの方と比べると税務調査の対象となる確率がかなり高くなります。日頃からレシートなど証拠や記録を保管し、帳簿を付けていく必要となります。
(次回は3月第2週号掲載)
〈プロフィル〉 日下 武(くさか たけし) 永野・森田公認会計士事務所NJ拠点マネージャー。大手日系食品商社での営業経験を活かし、顧客の立場になって、全体的なビジネス、会計、税務相談を受けている。メーカーからレストラン、リテーラーまで、幅広く顧客を持つ。【ウェブ】www.nagano-morita.com/ Tel:201-363-0050 E-mail:tkusaka@nagano-morita.com 2125 Center Ave., Suite 104, Fort Lee NJ
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