〈コラム〉さくらライフセイブアソシエイツ代表・清水直子「米国最先端臨床現場から」海外治療コンサルティングリポート 第28回

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~遺伝子疾患の着床前診断方法:単一遺伝子疾患(シングル遺伝子疾患:Single Gene Disorders)の着床前診断(3)~

2種の検証テストで各受精卵の健康と罹患を確実に見極める

家系から派生する特定の遺伝疾患を検査するシングル遺伝子検査の着床前診断のためには各患者様の特有のプローブ(型)が必要になりますが、今回からは、その着床前診断のためのプローブ作りのセットアップについて説明を開始いたします。
プローブ作成を開始するためには、まず、患者様ご本人と、その患者様のご家族で疾患をお持ちの方の各遺伝子分析リポートを提出していただくことから始まります。日本では、家系から派生する特定の遺伝疾患を診断することも、更には分析を行うことも、一般的ではなく、実施できる機関は限られています。しかし、数少ないながらも、代表的な疾患については遺伝子分析リポートが発行されていますので、どの医療機関で入手可能か、医療機関情報が必要な場合は、弊社までご相談ください。
次のステップとして、4週間から6週間かかるプローブ作成のためには、体外受精を行うご夫婦のDNAと遺伝疾患を持っているパートナー側の家族のDNAがそれぞれ必要になります。日本で標本を作り、米国の専門遺伝子検査場に送るため、一番簡易で安全な方法は、頬の裏からの繊維細胞を綿棒で採取する方法です。
プローブ作成には、当該遺伝疾患の遺伝子を持っている問題の疾患関連DNAマーカーを見つけることが鍵となります。これらの問題のDNAマーカーが実際の受精卵にあるかどうかを照合していきます。
当該受精卵が罹患しているかどうかを判断するためには、この問題のDNAマーカー照合テストと併用し、各疾患ごとに変わる特有の配列の領域でコピー(繰り返し)が正当なコピー数かどうかの“突然変異テスト”も行います。健常者の場合は、コピー数の範囲が規定内であるところ、罹患している場合は該当配列のコピー数が多く(Expansionと言います)、規定コピー数から乖離しています。この2種類の検証テストによって、各受精卵が健康であるのか、もしくは、家系から派生する特定の遺伝疾患に罹患しているのかを確実に見極めていきます。(次号に続く)
(次回4月第1週号掲載)

sakura life profile Photo〈プロフィル〉清水直子(しみず なおこ) 学習院大学法学部卒業、コロンビア大学で数学を学び、ニューヨーク大学スターンスクールオブビジネスでMBAを取得。マウントサイナイ医科大学短期医学スクール修了。メリルリンチの株式部で活躍し、2003年さくらライフセイブ・アソシエイツを設立。
【ウェブ】www.sakuralifesave.com/

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