〈コラム〉ケン青木の新・男は外見 第81回

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ギャバジンという素材

Print近年ビジネスの場においてスーツと並びジャケットとスラックスの組み合わせ、日本風に言えばセパレーツ・スタイルが認知されてきております。以前も書きましたが、ジャケットが無地やどのような柄の生地であっても無理なく合わせられるスラックスが2種あり、それがベージュ系とミディアムグレー系それぞれの無地であると。“系”と書きましたのは色の濃淡がそれぞれにあるからです。
今回触れたいのは、ギャバジンという素材についてなんです。gabardineと書きます。語源はユダヤ僧のケープgaberdineなのです。ギャバジンという生地には、ケープやガウンに見られるようなドレープ(drape:カーテン)と言います生地に備わるフワフワ、立体感が際立つアイテムなのです。
ギャバジンにはコットンとウール素材で織られたものの2種あり、コットンギャバジンは、かのトーマス・バーバリーが創り上げたトレンチコートで有名な防水コットン地であり、これをウールに置き換えたものがウールギャバジンですが、この生地を用いたスラックスは20世紀前半以降、アメリカ人男性のフェイバリットアイテムであり続けております。アメリカ人男性が重要視するのは、生地のフワフワ感(ドレープ)と剃刀のようなシャープなクリース(折り目)、さらに季節を問わず着用可能かつ丈夫なことなんですが、ギャバジン素材のパンツはこれら全てに当てはまるのです。
同じギャバジンでも厚手のコットンで同じように織られた生地をコットンギャバジン、日本の皆さまにはチノパンツの素材と申し上げた方が通りがいいでしょうか。
木曜日や金曜日にジャケットでお仕事をされる時には同じギャバジン素材でも、コットン(チノ)ではなく、ウールギャバジンのスラックスの方をお勧めします。ピシっと入ったクリースの美しさと、脚さばきによって生じる生地のドレープの美しさが、ビジネスの場に良い緊張感と心のゆとりのバランスをもたらしてくれるのです。それではまた。    (次回は3月28日号掲載)

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〈プロフィル〉 ケン青木(けん・あおき) ニューヨークに21年在住。日系アパレルメーカーの米国法人代表取締役を経て、現在、注文服をベースにしたコンサルティングを行っている。日本にも年4回出張。

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