〈コラム〉「COACH A」竹内 健 「対話で変える!」第17回

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対話の力(17)〝リクエスト/要望〟(その1:相手が受け入れやすいリクエストとは?)

こんにちは。COACH Aの竹内です。今号では、目標を達成する原動力となる「リクエスト(要望)」についてご紹介します。
コーチングでは、相手の話を聞くことや、質問することを重視しますが、「相手を成長させ、目標達成を促進する」ために、コーチは時に「リクエスト」することで、相手の行動を加速します。
人は、ともすると、「自分のできる範囲内」で仕事をしてしまう傾向があります。例えば、毎年「前年比越え」がやっとの課長に、「君の課の業績を来年3割伸ばすための戦略を一緒に考えてほしい」と、相手が普段考えないであろう、ストレッチな「リクエスト」をする。そうすることで、それまでとは別の視点で業務をとらえ、情報収集し、事業計画を練る、という変化が生まれるかもしれません。
しかし、上司の立場で部下に「リクエスト」すると、部下は、選択の余地のない「指示命令」と捉えてしまうこともあります。では、相手が受け入れやすく、飛躍的な成長につながるような「リクエスト」をするには、どのような点を意識するといいのでしょうか。
私のクライアント様には、「指示や自分の考えは伝えているが、『リクエスト』はほとんどしていない」という方も多くいらっしゃいます。
ある日系企業の社長であるAさんも、選択権を部下に委ねてしまうと、「I’m busy with other stuff」などと理由を付けて先延ばしされてしまうかもしれないので、指示の方が確実だ、と考えていました。そのAさんが、指示・命令を嫌うタイプの部下Bさんをコーチしている際、「Bさんは自分自身が正しいと思っていることに固執してしまっている」と感じました。そこで思い切って、「君は将来、チームを引っ張っていく存在だと思うし、自分の考えに固執せず、他のメンバーの考えもぜひ聞いてみてほしい」と、将来の期待感を込めて「リクエスト」してみました。
するとBさんは、普段指示をした時に出る消極的な反応ではなく、少しうれしそうに、「う〜ん、そうですね、ちょっと聞いてみてもいいかもしれませんね」と受け入れてくれました。
このように、「リクエスト」は相手が受け入れやすくなるような伝え方をすれば、指示よりも有効に伝わる場合があります。そして、それをきっかけとして新たな行動パターンを作り出し、相手の成長や目標達成につながっていくことがあります。
次号では、Aさんがアメリカ人部下のコミュニケーションから学んだ効果的な「リクエスト」の仕方と注意点をご紹介します。
(次回は4月第4週号掲載)

02222coach_a 〈プロフィル〉竹内 健(たけうち たけし)
エグゼクティブ・コーチ(COACH A USA 取締役 CFO)
PricewaterhouseCoopers LLPにて異例の日米5都市を異動しつつ、公認会計士として日米欧の企業や経営者へのサポートを行う中で、ソリューションの提供だけでなく対話を通じた人への投資があってはじめてクライアントのパフォーマンスが発揮されることを痛感し、これまた異例の会計士からの転身をはかり現職。
【ウェブ】www.coacha.com/usa/

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