〈コラム〉家族が再び暮らしを共にするという理念を妨げる最近の米国最高裁判所の判決(その3)

0

前回(3月14日号掲載)、両親の移民ビザ(米国永住権)申請に含まれている扶養の子供達の永住権申請において、自身のPriority DateがCurrent(申請者の永住権申請において最終移民申請に進 むことのできる段階になる状態)になる前に“Aged out”すなわち21歳になった場合、その子供達は両親が申請する移民ビザの元々のPriority Dateを適用できなくなる、という最高裁の決定がある一 方で、特定の状況ではPriority Dateを維持できることについて紹介しました。ではPriority Dateを維持できないAged out対象の子供の例とはどのようなものでしょうか。今回はその例を紹介します。

Ritaは米国市民で、Poonamというインド国籍の妹の永住権申請のスポンサーとなっています。Poonamはインド国籍の男性と結婚し、DeepakとSapnaという14歳と8歳の2人の子供達がいます。これらPoonamの配偶者と子供達は派生的に彼女の永住権申請に加えることになり、永住権申請カテゴリーとしては米国市民の妹としてF―4が該当します。ちなみにF―4カテゴリーでのインド国籍の永住権申請の待ち時間は約12年です。
Poonamのpriority dateがcurrentになるのを待っている間、DeepakはAged outになってしまいました。その後、仮にPoonamが正式に米国永住権を取得すれば、Deepakは永住権保持者である母親、つまりPoonamの未婚の成人の息子としての永住権申請の可能性があります。しかし、この時点で永住権申請のスポンサーをRitaから永住権保持者の親に代えなければならないことから、この場合、DeepakはPoonamの元々持っていたPriority Dateを維持でき ません。つまり、今回の判決からも分かる通り、Priority Dateを維持するためにはRitaからスポンサーされ続ける必要があり、一旦Aged outとなってしまったら、申請上、米国市民の成人の甥っ子や 姪っ子の永住権申請というカテゴリーが存在しないことから自動的に他のfamily-based categoryに切り替わることができないことを意味します。母親であるPoonamが一旦永住権を取得すれば、Poonamをスポンサーとして永住権申請を行うことが出来る一方で、それはスポンサーが変わることから自動的なカテゴリー変更とは見なされないという訳です。更に、永住権審査に対し、スポンサーが代わり永住権申請をやり直さなければならないことから、一旦時間も途切れてしまうことにもなります。このような状況では、残念ながら、これまでの待ち時間は考慮されず、新たに申請をやり直して、新たなPriority Dateに基づいた申請と待ち時間を覚悟し なければなりません。
(次回は5月第2週号掲載)

〈今週の執筆事務所〉シンデル法律事務所 7 W. 36th St., 14Fl. NYC Tel:212-459-3800
Email:slony@sindelllaw.com Web:www.sindelllaw.com

過去一覧

Share.