〈コラム〉不倫に基づく提訴権

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礒合法律事務所「法律相談室」

「不倫」と言えば一昔前に「不倫は文化」という発言をしてしまい、散々バッシングを受け、結果的に世間から見放された俳優が思い出されます。最近ではソーシャルネットワーキングサービスと呼ばれる媒体の進化に伴い学生時代の同級生、友人の友人、等人との接触が以前より簡単になり、「不倫」と呼ばれる行為に発展する頻度も著しく高くなったと言われています。
ニューヨーク州では1864年に”alienation of affection”と呼ばれる「夫婦間の愛、順風満帆な結婚生活の剥奪」を理由に、既婚男性が自身の配偶者(女性)の不倫相手(男性)へ損害賠償責任を求める事を可能とする法律が成立しました。不倫に基づく提訴権を認めた時代背景には、当時既婚女性は社会的に男性配偶者の「所有物」とみなされ、その所有物を奪った男への復讐を合法に認めるというものでした。このため当時は不倫に基づく提訴権は男性のみに認められており、女性には配偶者の不倫相手(女性)を訴える権利はありませんでした。この時代遅れで理不尽な不倫に基づく提訴権ですが、現在ではニューヨーク州、ネヴァダ州(ラスベガスが存在する州)を含んだほとんどの州で廃止されており、提訴権を認めている州は少なく、ユタ州、ミシシッピー州、サウスダコタ州等が少数派の州に入ります。ミシシッピー州においては州の最高裁判所は提訴権を認める最大の理由は「結婚の根源となる愛、社会、仲間意識を守るためである」という見方をしています。これらの州は「なんとなく分かるわー」という印象を受ける州ですが、日本人観光客が圧倒的に多いハワイ州も不倫に基づく提訴権を認めています。
州により劇的に異なりますが、第三者に不倫に派生する精神的苦痛、経済的損失等への損害賠償を求める場合、原告は通常は不倫事実の立証のみではなく、原告の配偶者による不倫行為への誘い等の自主的加担の有無、原告とその配偶者の結婚生活の崩壊を目的とした被告側の意図の有無、等を立証する必要があります。尚通常は提訴権は結婚当事者(親)のみに認められており、原告の子供やその他の身内は提訴する事はできません。
ちなみにニューヨーク州では民法では不倫に基づく提訴権は廃止され、現在では認められませんが、不倫は刑法でB級軽犯罪という立派な犯罪として定義されており、仮に奇跡的に起訴され、悲劇的に有罪判決を受けた場合、最大90日間の拘置所での拘束に罰せられる可能性があります。
(弁護士 礒合俊典)
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(お断り) 本記事は一般的な法律情報の提供を目的としており、法律アドバイスとして利用されるためのものではありません。法的アドバイスが必要な方は各法律事務所へ直接ご相談されることをお勧めします。
(次回は5月第3週号掲載)

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