〈コラム〉「COACH A」竹内 健 「対話で変える!」第19回

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対話の力(19)〝問いの共有〟(当事者意識)

こんにちは。COACH Aの竹内です。今月は、組織のゴールに部下やメンバーの意識を向け、風土を変革するために、ある会社の新部門長が取り組んだ事例をご紹介します。
皆さんは予算達成や仕事上の成功のために、会社や組織の仲間や部下とどういう会話をしていますか? 自らの過去の成功経験を共有したり、アドバイスしたり。部下の活動状況を把握するために質問もするでしょう。もちろん、それらは必要で、有効なことだと思います。一方、他にできることがあるとすればどんなことがあるでしょうか?
ある会社の部門長であるAさんは、昨年秋に、全く経験のない事業の部門長に就任しました。担当役員から話を聞き、目指す方向性は理解したのですが、実績を見ると決して順調とは言えないものでした。
部門内のベテラン社員や部下たちと話してみると、「これまできちんと前部門長の指示どおりにやってきています」、「新たに打つべき手があればご指示ください」といった返事がかえってきました。
その事業に関する経験のないAさんに共有できる成功体験があるわけでもなく、有効なアドバイスも思い当たらず、どう立て直せばいいのか悩んでいました。
コーチングを学んでいたAさんは、メンバーがルーティン作業を淡々とこなしている現状、そしてそのパターン化した思考や行動をどうにか変えていくには、皆で「問いを共有」することが有効ではないかと考えました。
「今の仕事をそのまま続けた場合、我々に起こりうるリスクや不利益は何だろうか?」
「毎日ひとつ、些細なことでも新たな工夫や改善をするために何ができるだろうか?」
部門メンバー全員が参加した会議で、問いかけました。これまでアドバイスや指示に従ってきた部下やメンバーは、少し面食らった表情で、押し黙ってしまいました。しかし、しばらくして一人が話し始めると、他のメンバーも次々と発言し、部内で同じ問いを共有し始めているようでした。
これらの「問い」は、ことあるごとに組織の中で繰り返され、それまでの上意下達の風土から、メンバーひとり一人が売上を伸ばす当事者であり、かつ、組織全体で一緒に考えていく姿勢を生みだしたのです。
皆さんの職場で共有している問いは何ですか? メンバー全員でその問いをあらためて一緒に考えてみてはいかがでしょうか。
(次回は6月第4週号掲載)

02222coach_a 〈プロフィル〉竹内 健(たけうち たけし)
エグゼクティブ・コーチ(COACH A USA 取締役 CFO)
PricewaterhouseCoopers LLPにて異例の日米5都市を異動しつつ、公認会計士として日米欧の企業や経営者へのサポートを行う中で、ソリューションの提供だけでなく対話を通じた人への投資があってはじめてクライアントのパフォーマンスが発揮されることを痛感し、これまた異例の会計士からの転身をはかり現職。
【ウェブ】www.coacha.com/usa/

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