〈コラム〉Jun Motai Coaching 罍 純介「本当のリーダーになる」第19回

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人と欲

私は当時米系銀行の腕利きディーラーをやっていました。ディーラーの仕事は相場を読んで自分の信じる考えに基づいて相場を張ることです。その結果として儲けを出すことが最大且つ唯一の目的となります。どんなに親切で思いやりのある人でも相場で儲からない人はクビです。逆にどんなに性格が悪く皆に嫌われても儲かれば誰も文句は言いません。1年を締めて儲かった金額に応じてボーナスが支給されます。より多いボーナスをもらう為に一生懸命相場とにらめっこをし、儲けようとします。24時間相場のことばかり考えます。何故ならば、ボーナスは想像を遥かに越える金額が期待出来るからです。
プロの相場の世界は金額の桁が違います。10億円、100億円、1000億円を電話1本で取引します。それだけ大きなリスクを背負います。あっという間に1000万円単位の損益がぶれてきます。そんな中で儲けを出し続けることはかなり難しいことです。ディーラーは周りからチヤホヤされます。週に数度の接待を受けるのも当たり前です。高級レストランで神戸牛を食べフランスの最高のワインを飲み、リムジン送迎は当たり前のことです。
そんな生活をしていると、それが当たり前になってくるのです。つまり勘違いが段々大きくなっていく訳です。

天国から奈落の底に落とされる
そんなディーラーとしての絶頂期に私の妻が突然倒れました。
何の前触れもなく、ある朝、心肺停止に見舞われ自宅で倒れました。
救急車をよび、救急隊が蘇生を試みましたが直ぐに心臓は動かず、近くの病院のERに運び込まれました。暫くERの前のベンチで待っていると医者が扉を開けて出てきました。「奥さんの心臓は戻りました」と言われ、「助かった!」と思いました。しかし次の瞬間その医者は、「しかし心臓停止の時間が長すぎました」と。次に決定的なことを宣告されました。「我々の経験上、良くて植物状態、かなりの確率で脳死に至る可能性が高いです」
その瞬間私の頭の中は真っ白、体中に鳥肌が立ちその場で呆然と立ち尽しました。
当時4歳、6歳、8歳の3人の子供はこれから手がかかるし、この後自分の人生は一体どうなるのかと、まさに奈落の底に突き落とされた感じでした。
(続きは次回に)

(第20回は7月16日以降にwww.nybiz.testでのみご覧になれます)

Mr. Motai
〈プロフィル〉 罍 純介(もたい じゅんすけ) CPCC(Certified Professional Co-Active Coach)。YKK(株)、バンカース・トラスト銀行東京支店、NY本店でパートナー、マネージング・ディレクター、東京トレーディング責任者歴任。東海銀行NY支店を経てMotai Advisors, LLCを起業、Jun Motai Coachingのブランドでリーダーシップ・ライフコーチングに従事。金融最前線のトップディーラーから人に焦点を当てたコーチングの分野に転身。【ウェブ】www.junmotaicoaching.com

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