〈コラム〉タイチ不動産「不動産と住まい事情あれこれ」第54回
新しい地下鉄ラインの開発、ハドソンヤードの開発、パークアベニューの開発とニューヨークではこれでもかというほど開発が続いています。特に著しいのは川沿いです。ハドソンリバー沿いではダウンタウンからアッパーイーストを越えてどんどん高層ビルが開発されています。ウエストビレッジにホイットニー美術館が新装オープンしたのも最近ですし、さらに北に上がればMTAの7番線と歩調を合わせるかのように、ハドソンヤードの開発が進んでいます。ハドソンヤード・プロジェクトは1270万平方フィート(118万平方メートル)以上の新しいオフィス、住宅、および小売スペースを含む16の超高層ビルが建つ予定です。これらは600万平方フィート(56万平方メートル)の商業オフィススペース、レストラン、カフェ、マーケット、およびバーを備えた75万平方フィート(7万平方メートル)の小売りセンター、ホテル、文化スペース、約5000戸の住宅、750席を持つ学校、および14エーカー(5・7ヘクタール)の公共空間からなります。総工費は200億ドル以上、一日の訪問者数は6万5000人と見積もられているそうです。クイーンズの注目エリアであるロングアイランドシティも最近になって開発が本格化してきました。こちらもイーストリバー沿いに並ぶ倉庫街でしたが、近年高層ビルが立ち並ぶエリアに変わってきています。
なぜ川沿いには倉庫が多かったのか。それはかつてニューヨークでは都市交通網が水上交通だった時代があったからです。水上交通が主だった時代には川近くにたくさんの倉庫が建てられました。そのため当時はイーストリバーやハドソンリバー沿いが栄えました。しかし、JFK空港ができたことによって、水上交通の重要性は低くなり、ハドソンリバー沿いはどんどん廃れていきました。そこに目をつけた人たちは廃れた倉庫などを使って80年代に多くのクラブをマンハッタンの西側にオープンしていったのです。その後、90年代にジュリアーニ市長の再開発政策により、アンダーグラウンドなクラブは一層され、おしゃれなラウンジがこのエリアに次々と登場しました。そこはミートパッキングエリアと呼ばれるかつては精肉工場街でした。今でも精肉工場はありますが、その多くがホイットニー美術館の移転のために売却されたり、年々縮小しています。
もちろんこれらの開発は行政の開発許可によるところが大きいですが、このようなニューヨークの歴史のとともに起きた変化だと言えるでしょう。
(タイチ不動産 山本竜也)
(次回は7月第3週号掲載)
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