〈コラム〉killing with kindness begging

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トミー富田「​ハーレム浅草下町考」Vol. 44

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ロンドンでの同様のキャンペーンポスター。人から集められたコインがドラッグとなって体中を満たし、死に至ることもあるという

「25セント恵んでくれませんか?」。日本ではあまり遭遇しなかった小銭乞い(物乞い)に、ニューヨークではあちこちで出くわす。日本人は大抵目を伏せて通り過ぎるのではないだろうか? 怖い、関わりたくないと思ったり、同時に数セントのお金すらポケットから出さなかった自分に罪悪感のようなものを覚えたり。 私は20年以上、ハーレムにある薬物依存症更生施設の支援をさせていただいている。創設者の黒人男性(自身も薬物依存症から50年前に回復)が外部に向けてよく話すこと、「小銭乞いにお金を渡し、人助けをしたようないい気分になるかもしれない。しかし、大半はそれでまたドラッグを(アルコール依存症の場合はアルコールを)買い、明日も、そして明後日もその場に立ち続けるんです。その小銭を更正支援団体に預けてください、その人たちの人生を取り戻すことに役立てますから」と。
では、この小銭乞いが本当に空腹の極限状態だったらどうだろう? 隣人愛に溢れたハーレムの教会のおばさんたちはこうだ。デリでホームレス風の人が小銭乞いを始めたのに気づくと、ちらっと見て、ふらふらしていると思ったら「何に使うの?」と尋ねる。相手が空腹だと答えると、即座にサンドイッチ等、最小限の食べ物を買い与える。場所がマクドナルドであれば「これでバーガー買ってきなさい。お釣りはあげないからね」と1ドル札を数枚だけ渡す。その後は自分の会話に戻り善意の押し付けも無い。しかしどんなに話に熱中していても、目はその人を追っており、お釣りをもらって店を出ようとしようものなら大声で「お金は渡さないと言ったでしょ!」と追いかけて数セントでも全部取り戻す。お金を渡すとドラッグを買うかもしれないと知っているから。でも食べさせてあげないと本当に死んじゃうかもしれないと思うから。

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若い頃に沢山の子供を産み一人で育てあげた肝っ玉母さんたちの愛はさりげなく大きい

沢山の苦労を乗り越えてきたハーレムのマザーたちは果てしなく強く、限りなく大きく優しい。 (次回は8月第2週号掲載)

〈筆者プロフィル〉トミー富田(トミーとみた) 東京浅草生まれ。ニューヨーク・ハーレム在住23年の音楽プロデューサー。1994年にアジア人初の「Dr. マーティン・ルーサー・キングJr. アワード」を受賞。ハーレム商工会議所会員。アポロ劇場ボードメンバー。20年以上続けている大人気の「トミー富田のハーレムツアー」は、日本からのファン、リピーターが多いことでも有名。

■トミー富田のハーレムツアー 電話:646・410・0786 ウェブ:tommytomita.com

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