〈コラム〉さくらライフセイブアソシエイツ代表・清水直子「米国最先端臨床現場から」海外治療コンサルティングリポート 第32 回

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着床前診断32  ~一般的な着床前診断に関するよくある疑問(2)~

長期間における影響はまだ観察中

前回(6月6日号掲載)から、着床前診断に関するコラムの締めくくりとして、着床前診断に関する、よくある一般的な疑問について解説を開始しています。

着床前診断(生体検査)自体を行うことにより子供に悪い影響が出る
ことはないか

着床前診断の長期的な影響については、重篤な副作用は報告されていません。着床前診断を伴って誕生した子供が、奇形や出生後の疾患を伴う確率が上がるという結果は見られず、複数の臨床調査においても着床前診断を伴って誕生した2歳から4歳の幼児が精神的、精神運的に劣るという結果は出ていません。しかし、特に副作用はないのではないか、と評価されているものの、新しい技術であるため、実施されてから長期間における影響はまだ観察中であり、未だ総合的に判断することはできません。
着床前診断は1990年に米国のシカゴで極細胞生検が行われたことから始まり、同年に英国のロンドンでも卵割球に対して実施されました。この後、急激にこの技術が発展し、広く実施されるようになりましたが、開始されてから25年ほどしか経過していません。このことを担当医と患者は理解する必要があります。着床前診断を行っている生殖クリニックは同意書を作成し、説明した上で、すべての患者に署名を必要としています。また受精卵に対し着床前診断が行われたどうかは、米政府の疾病対策予防センター(Centers for Disease Control and Prevention:CDC)に提出義務があり、全体外受精サイクルのうち何%に着床前診断が行われたかを報告しています。各クリニックの担当医師と徹底的に質疑応答を行い、CDCの各クリニックのデータも確認する必要があります。
次回は、着床前診断のコラムを開始してから2年半が経過した間にも、技術や方法論が急発展してことを受けて、この30回に及ぶ着床前診断に関する当コラムにもまだ書かれていない、現在一番進化している技術について触れたいと思います。
(次回は8月第1週号掲載)

 

sakura life profile Photo〈プロフィル〉清水直子(しみず なおこ) 学習院大学法学部卒業、コロンビア大学で数学を学び、ニューヨーク大学スターンスクールオブビジネスでMBAを取得。マウントサイナイ医科大学短期医学スクール修了。メリルリンチの株式部で活躍し、2003年さくらライフセイブ・アソシエイツを設立。
【ウェブ】www.sakuralifesave.com/

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