価値観とプライオリティー
前回は妻が倒れ、医者に「良くて植物状態、大体のケースは脳死に至る」と宣告されたところまで書きました。実は妻が倒れる3日前の夜、夫婦でディナーをしたのです。雪の舞う寒い冬の日でした。温かい料理が運ばれ食べ始めたところで、妻が私に質問をしてきました。「あなたにとって一番大切なものは何なの?」
妻の顔には悲壮感が漂っていました。その雰囲気を察知して私はこう答えました。「もちろん家族だよ」そうすると妻は「本当にそう思っているの?」と迫ってきました。楽しい筈の金曜のディナーは見る間に暗い空気に包まれ、私はその場をなんとか切り抜ける為に必死に答えていました。
まさかその妻が3日後の月曜日の朝にこのような姿になるとは夢にも思っていませんでした。
妻を救うために私はありとあらゆる手を尽くしました。友達も過去の助かった例を示す資料を沢山持ってきてくれました。しかし残念ながら妻の命を救うことは出来ませんでした。4カ月半の入院の後、息を引き取りました。人の命が目の前で終わっていくのを経験したのも初めてでしたが、その命を諦める最後の決断をしなくてはならなかったのも初めてでした。何と悲しい、厳しい決断なんでしょうか。
価値観に沿った行動
私にとって家族は最も大切だったことは言うまでもありません。でもその最も大切なものを最も大切なものとして行動をしていたか、と言えばそうではなかったと言わざるを得ません。思っているだけで、行動が伴っていなければ無に等しいということを思い知らされました。
価値観を明確にし、それに沿った行動を着実にとることが誰にとっても大切なことだし、その行動がなければ何の意味もないと肝に銘じたいと思います。
(第21回は8月20日以降にwww.nybiz.testでのみご覧になれます)
〈プロフィル〉 罍 純介(もたい じゅんすけ) CPCC(Certified Professional Co-Active Coach)。YKK(株)、バンカース・トラスト銀行東京支店、NY本店でパートナー、マネージング・ディレクター、東京トレーディング責任者歴任。東海銀行NY支店を経てMotai Advisors, LLCを起業、Jun Motai Coachingのブランドでリーダーシップ・ライフコーチングに従事。金融最前線のトップディーラーから人に焦点を当てたコーチングの分野に転身。【ウェブ】www.junmotaicoaching.com