〈コラム〉毎日の練習を続けるコツ

0

練習にルーティンにしたり、ご褒美をあげたり、一緒に祝おう

バイオリンレッスン成功の秘訣〜第4回〜

前回のコラムで、楽器を習うとき、水泳やサッカーなどと違い、家での毎日の練習が必要という話をしました。今回はその練習を続けるコツをご紹介したいと思います。

一つのものを毎日続けるということは簡単そうで、なかなか難しいですよね。大人にだって難しいことだと思います。運動、外国語の練習、日記などなど、続けようと思っても続かなかった覚えがありませんか?(笑)でも何か習慣にすると続けやすくなることもあると思います。子供は練習や宿題をやる時間を決め、毎日習慣にすると生活のリズムが整い、ものごとをスムーズに行いやすくなります。例えば朝起きたらまず15分バイオリンの練習をするとか、学校から帰ってちょっとおやつを食べて一息ついたら遊ぶ前に宿題をすませるなど、ルーティン(習慣)をつくることをおすすめします。

DSC_0065

私はマンハッタンの公立小学校でバイオリンのグループクラスを教えているのですが、特に子供達のルーティンの大切さを感じるのはこのときです。特別な学校行事のため普段と違う時間、違う教室で授業をするだけで子供達のまとまりがなくなります。週の同じ曜日、同じ時間、同じ教室、同じ先生でクラスが続くとバイオリンのように非常に細かくて難しいことを習う授業でも、子供達は集中して学べ、授業が楽しく、スムーズにいきやすいです。また、家で毎日練習してくるよう、練習チャートを配り、毎週同じ日にチェックします。練習した日は親にサインしてもらう決まりです。7日間毎日練習した子にはリボンやシールのご褒美をあげます。それを1カ月間続けた子供にはもっと特別な金色のリボンをあげる等々、意欲を高めるお手伝いもします。

バイオリンの成果は1週間や2週間ではあまり大きく現れないため、小さなお子さんには辛抱が強いられる楽器です。目に見えるご褒美でちょっと助けてあげると良い方向へ導いてあげられることもあります。でも、お菓子などのご褒美だと食べてしまったらおしまい。子供はそんなことはすぐに忘れてしまいますから、後に残るご褒美にするのがポイント。そうやって続けていき、1〜2カ月したところで練習チャートを一緒に振り返ってみるとずいぶん進歩したことを実感できるでしょう。2月前は弓がなかなかまっすぐに弾けなかったけれど、今は弓もまっすぐ、1の指まで弾けるようになった!など、小さな進歩を大きく祝ってあげましょう。そうすることでお子さんに自信がついていき、これからもがんばろう!という意欲にむすびついていくはずです。

英語にインスタント・グラティフィケーション“instant gratification”(すぐに得られる喜び)という言葉があります。これはポンッとボタン一つ押してネットで欲しいものが手に入る、食べたいものがその場で食べられるなど、欲がその場で解決されて満足するということ。赤ん坊なら泣いたらすぐにミルクをあげたりする必要がありますが、成長するに従い、お子さんが難しいことに時間をかけてゆっくりジワジワ成果を上げるという経験するのは非常に大切なのではないかと感じます。子供のころに時間をかけ、努力し、成功する、という経験はその後の人生にとって価値ある財産となるはずです。ひと月に1センチ成長できれば大成功! そうやって根気・忍耐・粘り強さを育んでいければ、将来、仕事などで苦労することに直面したときにあきらめず、解決・改善方法を考えられる人に育っていけるのではないかと思います。お子さんの毎日のバイオリンの練習のサポートは、保護者にとっても楽な仕事ではありませんが、家族でチームになって一生懸命応援してあげると良い結果が生まれるのではないかと思います。

(福田千尋バイオリン教室主宰)

福田千尋

【執筆者】ふくだ・ちひろ 福田千尋バイオリン教室主宰。東京芸大、ジュリアード音楽院を経て、ニューヨーク日系人会音楽コンクール優勝等、ヴィオラ奏者として国際的な演奏活動を続ける傍ら2005年よりハーレムの音楽学校Opus 118 Harlem School of Musicでバイオリンを教え始める。同校の若い教師を育てるためのティーチャー・トレーニングプログラムのトレーナーとして後進の指導、弦楽科のコーディネーターとしてマネージメントにも携わっている。
【ウェブ】www.chihirofukuda.com/

〈過去の一覧〉

Share.