〈コラム〉アメリカ進出時の駐在員事務所 グレーの部分が多く、罰金取られる可能性も

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「永野・森田公認会計士事務所 日下武」ビジネスのツボ 第50回

アメリカ進出を考えている日本に本社を置く会社は、現地法人化以外の選択肢としては、駐在員事務所、支店という事業形態の選択肢があります。今回はアメリカに駐在員事務所を構えるメリットとデメリットを説明します。新日米租税条約第5条において、日本企業が米国国内に恒久的施設を有する場合は米国で課税が生ずると規定されています。この恒久的施設とは、Permanent Establishment(PE)と呼ばれ、事業を行う一定の場所を指します。例えば、オフィスを賃貸した場合は、通常は連邦の税法上、恒久的施設と見られます。ただ、例外として、もしその日本企業のアメリカでの活動が本社の商品の保管、展示、本社の商品を第三者による加工のために保有、本社のために商品を購入、本社のために情報を収集、その他の準備、補完的な活動に限られる場合は恒久的施設とはみなされず、アメリカにおける事業活動をしているということにはなりません。簡単にまとめると、駐在事務所の活動が日本の本社のための市場調査や連絡代行に限られ、実際に受注や勧誘、契約締結などの事業活動を行わない場合はアメリカの事業活動にはならないということです。ただし、連邦法人税1120Fというフォームで税務申告をする義務はあります。しかし、州や地方レベルでは駐在員事務所について明確に規定しているところが少ないため、注意が必要です。普通、州や地方レベルでは、もし、従業員を雇用して事務所を保有したり、賃貸料を支払ったりすると事業活動をしているとみなされることが多いです。駐在員事務所を開設する時に州や政府当局に申請することは必要とはされませんが、州法人税、給与関係税の対象となるため、それらの登録や申請を行わなければなりません。アメリカの駐在員事務所の経費は日本本社の必要経費であると考えることができるので、日本の法人税計算上の損金算入が認められています。

新日米租税条約上、連邦税法上では事業活動に該当しない活動を行っていても、新日米租税条約に縛られない州からは、それらが事業活動であるとみなされ、指摘がされる場合もありえます。もし支店登記をしないで事業活動をした場合は、ペナルティーを支払わなければならない可能性もあり得ます。このように駐在員事務所は非常にグレーの部分が多いですので、罰金を取られる可能性があるデメリットと比べれば、駐在員事務所という選択肢を取らないほうが安全かも知れません。

(次回は4月第2週号掲載)

takeshi%20001[1]〈プロフィル〉 日下 武(くさか たけし) 永野・森田公認会計士事務所NJ拠点マネージャー。大手日系食品商社での営業経験を活かし、顧客の立場になって、全体的なビジネス、会計、税務相談を受けている。メーカーからレストラン、リテーラーまで、幅広く顧客を持つ。

ウェブ】www.nagano-morita.com/ Tel:201-363-0050 E-mail:tkusaka@nagano-morita.com 2125 Center Ave., Suite 104, Fort Lee NJ
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