〈コラム〉オフィス又は店舗の施工プランの注意事項

0

スペースプランニングには時間がかかるもの

オフィスや小売店舗スペースのリース契約の締結する前に改築、増築、改修工事、看板設置等の施工プランを準備・完成し、できる限り家主の承認を得ておくのが良いでしょう。テナントの施工プランはリース契約書に添付し、リース契約が締結されるまでには、全ての加入義務保険の準備が済み、スペースの引き渡しが済み次第、ニューヨーク市からの工事許可の申請が周到にできるようにしておきましょう。また、テナントが雇う予定の建設業者をリース契約書の中で特定し、承認を受けておけば、希望の建設業者を使うことに対しての家主の異議を防ぎ、工期の無駄な遅れを避けるのに役立ちます。

とはいえ、時と場合によっては、これを実行するのはなかなか難しいものです。一旦希望物件を識別すると、何度も現場に行って、点検、測量、図面作成の準備を行い、デザイナー、建築士、エンジニア、配管工、電気工等の専門家からのアドバイスを聞いたりして、兎に角スペースプランニングには時間がかかるものです。その反面、家主にはリース契約を早く締結するよう急かされ、早く決めないと他の人に希望物件を取られてしまうのではないかと恐れるあまり、スペースプランニングがまだ未完成だったり進行中の段階なのに契約書を締結してしまうことも、よくあります。しかし、様々な理由で、テナントの施工プランが承認されていないと、テナントは予定していた事業モデルや設定に従ったスペースの使用ができなくなってしまうリスクがあります。もっと深刻なケースとしては、もしテナントがリース契約が締結されるまでスペースプランニングに着手していなかった場合、そのスペースを希望の設定どおりに使用することが不可能だと気づくのが遅すぎたり、予期せぬ状況で施工料が法外に高くなってしまったりすることがあります。テナントにリース契約を解除する権利があることは稀なので、予想外の費用が高くつくことになってしまいます。

家主は、テナントに対して期間限定で“フリーレント(入居後家賃が無料になる期間)”を提供し、“フリーレント”が終了するまでには、テナントが現場の準備を恐らく終えて事業を始められるようにするのが一般的です。しかし、特にニューヨーク市では工事に遅れが伴うもので、リース契約に含まれている“フリーレント”では施工のプランニング、承認、工期の過程全てをカバーするには不十分なことがあります。従って、スペースプランニングと承認手続きは“フリーレント”が始まるまでには完成済みか、それに近い状態にしておくことが望ましいでしょう。それならば、“フリーレント”を無駄なく使うことができます。リース契約が締結され、“フリーレント”が始まってから初めてスペースプランニングに取り掛かるのでは、“フリーレント”の利点はほとんど失われてしまいます。

従って、オフィスや小売店舗のスペースを求めている場合、希望物件が見つかったら直ちに現場の検査をしてスペースプランニングが開始できるように、業者チームを手配しておきましょう。

〈今週の執筆者〉(弁護士 マリアン・ディクソン)

(お断り)本記事は一般的な法律情報の提供を目的としており、法律アドバイスとして利用されるためのものではありません。法的アドバイスが必要な方は弁護士・法律事務所へ直接ご相談されることをお勧めします。

(次回は9月第1週号掲載)

〈今週の執筆事務所〉Miki Dixon & Presseau 法律事務所
122 East 42nd Street, Suite 2515 NY, NY 10168 Tel:212-661-1010 Web:www.mdp-law.com
過去一覧

Share.