対話の力(4)
Acknowledgement(承認、認知)
こんにちは。COACH Aの竹内です。皆さんは“Acknowledgement(承認)”という言葉にどれほど聞き慣れていますか? それは、「相手のことを認める」ことであり、やる気や達成感を持たせる行為です。
前々回のコラムにて社長さんが、「がんばってるね」と声掛けしていたエピソードをご紹介しました。実は、この行為そのものが、相手の存在に気づいていることを伝えている“承認”なのです。連日残業している相手に、「その状況やがんばりを私はよく分かっていますよ」と伝えることで、相手は自分のことを見てくれていると感じることができます。
他にも、「君は営業戦略を一人で提案できるようになったね」などと部下が成長した事実を伝えたり、「売上目標を達成したんだね」と成果を承認してあげることも“Acknowledgement”と言えます。
では、どうしたらこうした“承認”ができるようになるのでしょうか。この社長さんは、とにかく部下や周囲の人たちをよく観察していたのでしょう。部下の一人ひとりがどういう状態で、どう変化し、どんな成果をあげているのかをよく見ていたからこそ、それらにいち早く気づくことができたのではないでしょうか。
また、気づいたことをそのまま口にする、つまり自分の評価や意見を入れずに事実だけを伝えることにより、相手にとって素直に受け取りやすくしてあげることがポイントです。
これは、“ほめる”行為との違いにもなります。「目標達成、すごいね」という賞賛は相手に対しての評価であり、良かれと思って言ったことでも相手との関係性や状況によっては違うニュアンスで受け取られてしまうこともあります。
こうした“Acknowledgement”を増やすには、まず毎日の挨拶から始めてみてください。これも立派な相手への承認なのです。そんな簡単なことと思われるかもしれませんが、相手を見てきちんと毎日挨拶をしている方は意外に少ないのではないでしょうか。
皆さんも部下や周りの人たちをよく観察してみてください。そして、相手のがんばりや変化に気づいたら、ぜひ見たままの事実を伝え、“Acknowledge”してみましょう。部下は達成感ややる気を感じ、次の自発的な行動につながっていくかもしれません。
(「WEEKLY Biz」2014年2月22日号掲載)
〈プロフィル〉竹内 健(たけうち たけし)
エグゼクティブ・コーチ(COACH A USA 取締役 CFO)
PricewaterhouseCoopers LLPにて異例の日米5都市を異動しつつ、公認会計士として日米欧の企業や経営者へのサポートを行う中で、ソリューションの提供だけでなく対話を通じた人への投資があってはじめてクライアントのパフォーマンスが発揮されることを痛感し、これまた異例の会計士からの転身をはかり現職
【ウェブ】www.coacha.com/usa/
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