〈コラム〉日本人が米国内で起業するには(2)

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LLCと言われる有限責任会社(Limited Liability Company)について

前回(12月3日号掲載)は個人自営業とパートナーシップについてお話ししました。今回は、一般にLLCと言われる有限責任会社(Limited Liability Company)についてご説明します。

Q 有限責任会社(以下、LLC)を立ち上げて事業を始める人が比較的多いそうですが、そのLLCの特徴を教えてください。

A LLCはパートナーシップとC法人(普通法人)の中間的な組織で、名称の最後にLLCをつけます。オペレーティング・アグリーメントを作成してニューヨーク州に登録しなければなりませんが、個人自営業やパートナーシップと違って有限責任なので、個人資産に保護がつくのが大きなメリットです。

しかも、合法的であれば、法人の場合のように決まった形式で運営しなければならないという制約がなく、パートナーシップと同様、会計年度末にメンバー(LLCの場合は出資者を株主と呼ばずにメンバーまたは構成員と呼ぶ)の配当にのみ、税金がかかります。法人税と株の配当金に掛る個人の所得税のダブル課税がなく、しかも個人資産の保護があるという点で、多くの人がこの形態で起業しています。ただ、その反面、ほかの組織よりもLLCは立ち上げにコストがかかるというデメリットがあります。

オペレーティング・アグリーメントの作成は素人には難しく、弁護士に依頼する場合が多いですが、その費用が数百ドルから数千ドルかかります。また、カウンティーが指定する新聞や雑誌にそのLLCが成立したという告知を行って、一般の人達に知らせる義務があります。これをpublication requirementといいますが、これにも数千ドルのコストがかかる場合があります。法人にする場合はpublication requirementの義務はないので、LLC組織を作る場合は法人組織にするよりもスタートアップの際にコストがかかる点が難点と言えます。

Q では、C法人とはどのような組織でしょうか。また、S法人とはどんな点に違いがあるのでしょうか。

A C法人とS法人が日本でいう株式会社に当たり、名称にInc., Corp., Ltd. のいずれかをつけます。

C法人は普通法人と言われることからもわかるように、最も一般的な事業組織です。投資家に投資してもらって株券を発行し、資本を集めることができ、また、特別な場合(従業員に給与を支払わなかった、など)をのぞいて株主に会社の責任がかかってこないのが大きな利点です。ただし、法人税のほかに、株の配当があった場合は、その分について個人に税金がかかります。

つまり、C法人の場合は二重課税になるわけですが、これを防ぐことができるのがS法人です。パートナーシップの場合と同様、株主への配当にのみ税金がかかるというのがS法人の大きな利点です。

S法人を設立するには、まずC法人の手続きを行い、これが完了してから2カ月15日以内に、税務局にS法人の申請を行うという手順になりますが、S法人を申請するにはいくつかの条件を満たさなければなりません。S法人の場合、株主は75名まで。さらに、株主の中にnon-resident alien(183日以上米国内に滞在していない外国人)がいる場合はS法人の申請はできません。

〈今週の執筆者〉(弁護士 弁護士 三木克己)

(お断り)本記事は一般的な法律情報の提供を目的としており、法律アドバイスとして利用されるためのものではありません。法的アドバイスが必要な方は弁護士・法律事務所へ直接ご相談されることをお勧めします。

(次回は2月第1週号掲載)

〈今週の執筆事務所〉Miki Dixon & Presseau 法律事務所
122 East 42nd Street, Suite 2515 NY, NY 10168 Tel:212-661-1010 Web:www.mdp-law.com
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