着床前診断17 ~最新の性染色体(男女産み分け)と22対の常染色体の着床前診断方法(5)~
3日目の受精卵の生体検査は損傷のリスクがあり妊娠率を下げる
前回のリポートでは、着床前診断(PGD)の方法論を検証するとき、技術の正確性のみでなく、各技術の結果取得にかかる時間も、体外受精サイクルの成功のためには大切な要因であること、また、現在最も普及しているaCGH(アレイCGH)法は約5%のエラー(誤差)があるだけでなく、各受精卵に対する着床前診断の結果が出るまでに24時間かかるため、受精卵5日目のフレッシュ移植のためには3日目の受精卵の細胞を採取する必要があり、ここに大きな問題があるということをお伝えしました。
着床前診断は、受精卵に対する生体検査ですが、受精卵の成長と生体検査のスケジュールは以下のようになります。
まず採卵を行い授精させる日をデー0と数えます。次の日に受精したかどうかを確認し、受精卵となった日をデー1とします。ここから受精卵は、成長、つまり、分割を続けます。この成長過程で生体検査のために細胞を一つ採取し、その採取した細胞のみを専門検査場に送ります。採取された細胞以外の、基盤となる受精卵自体は採卵を行った生殖医療クリニックのラボラトリー(受精卵培養室)にそのまま残し培養が続けられます。そして生体検査のために採取された細胞の一つに対し、専門検査場はそれぞれ採用している技術方法により診断を行います。この診断はリポートとなり生殖医療クリニックへ報告されることになります。
例えば、受精卵三つに対して着床前診断を行う場合は、受精卵1、2、3のそれぞれから一つずつ細胞を採取します。そして、その受精卵細胞1、2、3に対応して細胞の分析結果が報告されます。その間、生殖医療クリニックにて培養されている受精卵1、2、3は成長(分割)を続けることができるか、そして、戻ってきた結果が正常であるか、という2本立ての両方の条件を通過した受精卵がいくつあるかが、いくつ移植できるか、という判断の基礎になります。
この過程において、このところ、生殖医療界の臨床現場の受精卵培養士、生殖内分泌専門臨床医の間では、3日目の分割がそれほど進んでいない受精卵の生体検査は受精卵本体への大きな負担と損傷のリスクがあり、妊娠率を下げるものであることが明らかになってきました。
次回はこのリスクを避けるために臨床現場で選択されてきている方法論について説明します。(次回は5月第1週号掲載)
〈プロフィル〉清水直子(しみず なおこ) 学習院大学法学部卒業、コロンビア大学で数学を学び、ニューヨーク大学スターンスクールオブビジネスでMBAを取得。マウントサイナイ医科大学短期医学スクール修了。メリルリンチの株式部で活躍し、2003年さくらライフセイブ・アソシエイツを設立。
【ウェブ】www.sakuralifesave.com/