「永野・森田公認会計士事務所 日下武」ビジネスのツボ 第27回
皆さん、“Resiliency”という言葉を聞いたことがあるでしょうか。辞書を引くと「弾性限界の範囲で歪めた後に元の形や位置に戻ることのできる素材の物理的特性」と記してあります。何かすごく難しそうですが、私がこの単語を聞いたのは、先日参加した10歳の娘のテニスキャンプです。そして、この言葉が、キャンプのテーマになっていました。ボールは弾力があるし、ラケットもしなるので、物理的なことで何かテクニックを教えるのかと思っているとそうではなく、実は精神面の教育で使われていました。
試合中にミスをした時にどのように自分を回復させるか、どのように元の精神状態に戻すかということを子供達に考えさせて、ジャーナルを書かせていたのですが、とても興味深い教育方法だと思いました。私は、学生時代はサッカーをしており、テニスに無縁だったのですが、スポーツに共通していえることは、テクニックだけではなく、精神面が大きく影響することだと思います。プレイ中、決定的なチャンスを外してしまうと、シュートをするのが怖くなり、撃てるのにパスで逃げたり、逆に点数を決めると体が軽くなり、更に動きが良くなりました。サッカーはチームスポーツですが、シングルスのテニスやゴルフは1対1のスポーツですので特に個人の精神的強さが影響すると思います。スポーツは、一方的に負けていた試合から大逆転で勝ったり、本当に最後まで勝敗がわかりません。
ビジネスにおいても、精神的な面が大きく影響することがあります。商談にもスポーツに良く似たところがあります。相手を研究し、自分が用意したシナリオどおりに商談を進めていたところ、最後の最後で顧客の方針が変わり、商談がまとまらなかった事もあります。そこで精神的に落ち込み、諦める営業の人もいるかと思いますが、「自分ならまた契約を成立させられる」という信念さえあり、怖がらずに精神的に立ち直ることができれば、良い結果を生むことが多くあります。実際私の経験からも、粘り強くグリーティングカードなどを送り、2年後に契約が取れたことがあります。人間なので自分がミスをしたり、追い込まれた時に精神的に落ち込むことは普通です。ただ、そのミスからの回復力、つまり“Resiliency”こそが、ビジネスに成功するツボではないでしょうか。(次回は5月第2週号掲載)
〈プロフィル〉 日下 武(くさか たけし) 永野・森田公認会計士事務所NJ拠点マネージャー。大手日系食品商社での営業経験を活かし、顧客の立場になって、全体的なビジネス、会計、税務相談を受けている。メーカーからレストラン、リテーラーまで、幅広く顧客を持つ。【ウェブ】www.nagano-morita.com/ Tel:201-363-0050 E-mail:tkusaka@nagano-morita.com 2125 Center Ave., Suite 104, Fort Lee NJ
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