対話の力(6)
〝フィードバック〟(その1)
こんにちは。COACH Aの竹内です。今号から数回にわたり、“フィードバック”についてご紹介します。
私は、前職でフィードバック制度があった経験から、長らく「フィードバック≒アドバイス」と捉えていました。アメリカ人上司から、「君のやっていることをもっと社内の別の部署にもアピールした方が君のプレゼンスを高められるんじゃないか」といった「フィードバック」を受けていたからです。
ところが、コーチングを学んでいくと、フィードバックは「アドバイスとは異なるもの」であること、かつ、アドバイスなど必要ないであろう世界の名だたるリーダーでさえその価値を認め、必要としていることが分かってきました。
例えば、グーグルの共同創業者、エリック・シュミット氏は、インタビュー(CNN.Money.com)で、「“人”は自分を客観視することが不得手なため、自分の振る舞いを観察し、それについて言及してくれる第三者の存在は貴重で、“Everyone needs a coach”」と発言しています。そして、自分も早くからフィードバックを受けていれば、今より良い結果を、より早い時期に生み出せたかもしれない、と言っています。
また、マイクロソフトの創業者、ビル・ゲイツ氏は、TEDカンファレンスで、「(アメリカの)学校の先生たちこそフィードバックが必要だ」と語っています。「教師には外部からの声(フィードバック)が入りにくく、(そのため)彼らの教育者としてのクオリティは過去からほとんど向上していないし、今後もその見込みは低いだろう」、と嘆いています。
私は、彼らの言葉を聞き、「自分はこれまで、本当の意味でのフィードバックを受けてきたのだろうか。『本物の』フィードバックを受けてみたい」と思いました。さらには、「『自分が認識している自分』は他人に見えている自分とは異なるかもしれない」と、不安さえ覚えました。
先の二人が主張するように、フィードバックとは「第三者の視点」がもたらしてくれるものであり、それは本来、多くの人々が求めているものなのかもしれません。
では、フィードバックは人々の目指すゴールや結果にどう役立つのでしょうか。次回以降、掘り下げたいと思います。
(次回は5月第4週号掲載)
〈プロフィル〉竹内 健(たけうち たけし)
エグゼクティブ・コーチ(COACH A USA 取締役 CFO)
PricewaterhouseCoopers LLPにて異例の日米5都市を異動しつつ、公認会計士として日米欧の企業や経営者へのサポートを行う中で、ソリューションの提供だけでなく対話を通じた人 への投資があってはじめてクライアントのパフォーマンスが発揮されることを痛感し、これまた異例の会計士からの転身をはかり現職。【ウェブ】www.coacha.com/usa/