礒合法律事務所「法律相談室」
「銀行に現金を下ろしに行ったら口座が凍結されていました。何故ですか? どうしたらいいでしょう」という相談を受けます。通常銀行口座の凍結は口座の名義人(被告)への何らかの訴訟および裁判所による支払い命令の存在を意味します。しかし、被告である名義人は訴訟の通知を受理していない場合が多く、訴訟および支払い命令の存在さえも知りません。訴訟への対応を怠ると、結果的に「欠席」という形で訴訟に負け、支払い命令が下されます。
ニューヨーク州の場合、支払い命令(判決)が下されると、原告は被告の銀行へ規定の通知・書類を提示し、支払い命令額の2倍の額を凍結させます。その後、法規期間・手続きの後、市の保安官(Sheriff)を通じ、銀行から支払い命令額およびその他の諸経費が支払われます。
凍結された口座を解除するには自己破産の申請を除き二つの方法があります。一つ目の方法は原告人の弁護士への連絡、直接交渉です。ただしこの方法は凍結された口座金が凍結対象外である場合のみ有効です。ニューヨーク州では非課税所得保護行為法(Exempt Income Protection Act)により特定の所得金は凍結の対象外になります。その例として規定条件を満たす社会保障給付金、失業手当給付金、障害給付、労働者災害補償等が挙げられます。口座の残金が全て凍結対象外である場合、被告(口座名義人)は原告の弁護士に直接連絡をとり、凍結対象外の事実及び入金証明等の証拠を提示します。十分な証明が提示された場合、原告の弁護士は直ちに銀行に口座締結の解除命令を提示することが義務付けられています。
口座金が凍結対象外とならず、かつ法規された最低免除額以上の場合、また凍結対象外の所得と混合である場合、被告はもう一つの方法として支払命令を下した裁判所へ「Order to show cause」と呼ばれる判決撤回要求の手続きを行うことが可能です。この手続きは基本的に裁判所に「裁判所に出向かなかった合理的な理由」および「議論価値のある答弁」を提示することにより裁判所へ支払い命令の撤回を要求します。仮にその要求が認められた場合、支払い命令・判決は撤回され、凍結された口座は解除されます。ただし、訴訟が再開されることになるため、被告は欠席判決を避けるためにも訴訟の対応をする必要があります。その過程には一つ目の方法である直接交渉と比べ多くの時間を要します。しかし時間は掛りますが、結果的に訴訟に勝訴した場合、再び口座が凍結することはありません。一つ目の直接交渉の場合、一時的に口座凍結は解除されますが、原告が再度凍結手続きをとる可能性があります。よって口座残金が凍結の対象外であっても、将来的な凍結を避けるために、判決撤回要求の手続きを行うことが賢明です。
(弁護士 礒合俊典)
(お断り) 本記事は一般的な法律情報の提供を目的としており、法律アドバイスとして利用されるためのものではありません。法的アドバイスが必要な方は各法律事務所へ直接ご相談されることをお勧めします。
(次回は6月15日号掲載)
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