「永野・森田公認会計士事務所 日下武」ビジネスのツボ 第18回
真似をするということはズルいことだからしてはいけないと子供の頃教わった気がしますが、ビジネスの世界ではこの真似というのは成長への近道だと思います。“真似をする”を英語でmimicといいますが、MBAの授業では“(成功を)再現する”という意味で使うということを以前、コラムでも紹介させていただいたと思います。この他にも既存のモノや方法を分析・分解して、より発展したものを作るという「リバース・エンジニアリング」という考え方があります。
私は以前、レストランに食材を卸す営業をしていたのですが、新人研修で先輩に同行させてもらいました。いつも成績が良い2人の先輩がいたのですが、同行してみて驚きました。1日目はA先輩だったのですが、とにかくしゃべりまくり、たくさんのオーダーを取るというやり方でした。受注しているアイテムリストを上から読んでいき、一つでもアイテムがリピートしないと「あれ、この前はこの商品を取ってくれたのに、今回はスキップ? なんで? 他社の方が安かったって? ちゃんと質をみた? チープなものばかり買うとあなた自身もチープになるよ!」と相手が他社から買ったことを責め立てるような営業でした。こんなことを言ってよくお客に怒られないなと心配でしたが、逆にお客さんは笑いながら謝っていました。良い関係ができていた証拠です。
次の日はB先輩でした。一件目の寿司レストランに到着しました。A先輩はずっと立ったままオーダーを取っていたのですが、B先輩はまずカウンターに座りました。すし職人さんがいろいろな話をしてくれたのですが、B先輩はうなずいているだけです。そして、注文が始まりました。B先輩があらかじめ渡していたリストで職人さんが注文していきます。B先輩はほとんど話しません。逆に職人さんの方からお勧め品があるかと尋ねられました。それに対して「そういえば、新商品の地酒があります」というとB先輩はその新商品について、かなり詳しい説明をしました。高価なお酒だったのですが、その日回った8割のお店に入りました。
2人の営業スタイルはまったく違うのですが、成績はトップです。私はどちらの先輩とも性格が違い、全ての真似はできないので、A先輩の積極的行動とB先輩の話を聴くという姿勢で、自分の営業スタイルの土台を築きました。皆さんもリバース・エンジニアリングで既存のモノから新しいものを創造してみたらいかがでしょうか。
(次回は8月第2週号掲載)
(「WEEKLY Biz」2013年7月13日号掲載)
〈プロフィル〉 日下 武(くさか たけし) 永野・森田公認会計士事務所NJ拠点マネージャー。大手日系食品商社での営業経験を活かし、顧客の立場になって、全体的なビジネス、会計、税務相談を受けている。メーカーからレストラン、リテーラーまで、幅広く顧客を持つ。【ウェブ】www.nagano-morita.com/ Tel:201-363-0050 E-mail:tkusaka@nagano-morita.com 2125 Center Ave., Suite 104, Fort Lee NJ
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