米国議会は久々に移民法改正を検討しています。米国内に1100万人いる不法入国者に永住権や市民権を与える道を開く包括的な移民法改正法案について、議会は合意の道を探ってきました。「Border Security, Economic Opportunity and Immigration Modernization Act of 2013」と呼ばれるこの法案は上院では可決されたものの、下院の合意を依然必要としています。
上院法案
上院法案(S.744)は、不法入国者を合法化することに加え、国境警備の強化、企業による不法移民の雇用をより厳格に規制、移民および非移民に関する条項を含んでいます。雇用主にとって最も重要なのは、非移民と移民両方の機会を拡張しつつ、新たな費用や制約、それに要件を追加している条項です。
H―1Bビザの発給枠:H―1Bビザの発給枠は11万5000件に増え、需要が発給枠を超え、かつマネジャーや専門家、それに関連する職業の失業率が44・5%以下であれば、当該年度内において発給枠を5000件から2万件に増やす方式が追加されることになります。発給枠の上限は18万件になり、米国の上級学位保持者(修士号以上)向けは2万件から2万5000件に引き上げられますが、「STEM(科学、技術、工学、数学)」の卒業生に限られます。
H―1Bの費用:H―1Bの労働者を多く有する雇用主、H―1Bの扶養家族の労働許可に影響を与える条項もいくつかあります。雇用主が支払う費用は2500ドルに引き上げられ、従業員数が25名未満の場合は1250ドルとなります。
L―1ビザに関する条項:L―1ビザ保持者の就職斡旋に関して制約が加えられ、費用が新たに追加されるとともに、L―1ビザの従業員を多く雇用している企業には新たな費用が課されることになります。
永住権に関する条項:同法案の最初の数年間で、1992年度から2013年度までの永住権の未処理分をなくすため、14万件の雇用ベースの永住権枠が引き上げられます。さらに同法案では、全てのEB―1のケース、米国の博士号または外国の同等の学位を持つ外国籍の人、そして永住権申請の5年以上前にSTEM分野で米国の修士号以上の学位を持ち、米国でその関連分野の職に就く人たちは、その枠から外れることになります。
労働証明:同法案ではSTEMの卒業生が労働証明書を求めることを除外しています。労働証明が求められる時には、1件あたり1000ドルの費用を雇用主に追加しています。
下院法案
同法案は下院司法委員会には認可されています。下院の法案が含むであろう条項の一つは「SKILL Visa Act」と呼ばれる高いスキルを持つ労働者に移民の機会を拡大しようとするものです。この法案は米国の大学でSTEM分野の上級学位を取得した外国籍の人たちに移民ビザを追加的に割り当てるもので、彼らに4万件分を追加し、標準的なH―1Bビザの発給枠を15万5000件に引き上げることになります。これによって、移民ビザに課されている雇用ベースでの国ごとの上限がさらに形骸化することになります。
(弁護士:リチャード A. ニューマン)
(次回は9月第4週号掲載)
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(「WEEKLY Biz」2013年8月24日号掲載)