● 永住権の復旧
このたび、下院と上院で同様の法案(新法)が提出されました。その法案とは、会計年度1992年から2007年までの間に未使用となって破棄された移民ビザ(永住権を復旧しようというものです。枠数(制限)のある雇用ベースまたは家族ベースといった永住権のカテゴリー(EB1、EB2やEB3)が対象となります。
年度ごとに永住権の発行数には制限があります。会計年度内に発行予定の永住権が全てが発行されなかった場合、残った永住権は未使用のままです。この法案では1992年以降に破棄された永住権の復旧を認め、未使用となる永住権を破棄せずに、自動的に次の会計年度へ繰り越そうと提案しています。
この法案が強く支持され、近い将来、法律になるよう願って止みません。ビザが広範囲化し、将来的に永住権の付与が早まればいいですね。
● E-Verify
さらに、上院で提出された同法案の中で、「E-Verify」システムを更に5年間更新しようと提案されました。もう一つの法案では永久的にしようとあります。
「E-Verify」とは、移民局がソーシャル・セキュリティ・オフィス(SSA)と提携して、連邦政府のデータベースにアクセスし、新たに雇用する予定の人物の適正やソーシャル・セキュリティ番号が有効であるかを調べ、雇用主を援助する電子システムのことです。「E-Verify」プログラムへの参加は雇用主の任意によります。しかし中には、州当局と契約している雇用主や連邦政府の仕事を請負っている雇用主へプログラムの参加を要請し始めている州もあります。
● 国境でのチェック
米国国境係官は、空港や陸地から米国へ入国する渡航者が持ち込む電子機器に記録された情報をチェックすることがあります。チェックの対象となるのは、ラップトップ型コンピュータや外付けハードドライブ、フラッシュメモリードライブ、携帯電話などの携帯機器です。米国国家安全保障省(DHS)は、「国境での電子機器のチェックは、安全管理や児童ポルノ摘発(最近の連邦裁判判例)が目的である」と正当性を主張しています。
米国控訴裁判所(北カリフォルニア)は、「米国国境係官は、明らかに疑わしいという理由で電子機器内の情報をチェックする必要はなく、あくまで自身の裁量でチェックを行ってよい」と記しています。多くのビジネスリーダーや法の専門家達は、憲法の第4修正条項の保護のもと、このようなチェックは不当な調査や押収であり、プライバシーに関して渡航者の権利を侵していると考えています。
● 電子システムによるビザ無し渡航許可
電子システムによる渡航許可(ESTA)とは、ビザ無し渡航プログラム(VWP)で渡航する旅行者が、オンライン上で事前に渡航許可を取得するシステムのことです。2008年8月1日、任意によるESTAプログラムの申請受付が開始されました。来たる09年1月12日からは、ビザ無しプログラムで米国へ渡航する旅行者全員が、ESTAを取得しなければなりません。ビザ無しプログラムでの旅行者は、米国へ出発する72時間前までに渡航の許可を得る必要があります。ただし事前に許可を得たからといって、米国への入国許可を得たということにはなりません。旅行者は入国の際、必ず空港で通常の入国審査も受けます。ESTAは、ビザ無し渡航者の安全性を事前に調べる為のプログラムです。
ビザ無し渡航者は、オンライン上(https://esta.cbp.dhs.gov)でESTAを取得します。申請する情報は、個人情報、パスポート情報、フライト情報また過去の逮捕歴、有罪判決、疾病、ビザの却下歴についてです。現在のビザ無しでの米国入国の際も同じ情報を求められます。集められた情報は米国法執行データベースへ送られます。ほとんどの場合、旅行者がビザ無しでの渡航に適正かどうか、即座に決定されます。ESTAの許可は2年間又は旅行者のパスポートの有効期限まで有効で、その間何度も渡航することが可能です。
(弁護士:リチャード A. ニューマン)
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(「WEEKLY Biz」2008年8月22日号掲載)