対話の力(7)
〝フィードバック〟(その2)
こんにちは。COACH Aの竹内です。前回に続いて“フィードバック”について取り上げ、今号では少し掘り下げていきたいと思います。
皆さんは、フィードバックを受ける時、どんな感情や変化がご自分の中に起こりますか? エリック・シュミット氏やビル・ゲイツ氏の発言を聞き、私は、「『本物の』フィードバックを受けてみたい」と思ったわけですが、一方で、「自分のことを他人からズケズケ言われるのは嫌だし、ちょっとコワイな」とも感じていました。
いざフィードバックを受けてみると、ポジティブな内容の時はドキドキしながらも穏やかに聞いていられたのですが、「あなたが話していることは、具体性がなくて聞き手に伝わりにくい」など、自分の予想と異なったり、改善を要するケースでは、自分の表情がこわばっていくのが分かります。そして、窮屈というか悔しいというか、なんとも言えない気持ちがこみ上げ、額に汗する自分に気づきました。
私は、どうしてそういう現象が自分に起こっているのかを考えてみました。自分のプライドを崩される恐れ、それに動揺している自分を隠したい思い、などなど、そんな感情が私の中で湧き起こっていたのです。
また、受けたフィードバックを、“頭では”取り入れて自らの行動に反映させていこうと思っていても、なかなか実行に移せないという現象も起こりました。それは、これまで良かれと思って行っていたことを、フィードバックの結果、修正する。つまり、それまでの自分を否定しなければならないような感覚に陥ったがゆえの反応でした。
フィードバックとは、「自分が周囲からどのように見えているのか、どんな影響を与えているのか」という事実を、第三者の視点を通じて知ることです。人は、“頭では”それをぜひ知ってみたい、リーダーシップを高めるのに有効だ、と理解できるかもしれません。しかし、それは極めて人の感情を刺激しやすく、フィードバックする側(コーチ)は単に機械的にそれをやればいいというものではないことに留意する必要があります。
フィードバックを受けたら、まずは自分の中に起こる変化に目を向け、感じとり、それをフィードバックしてくれている相手に伝えてみてください。それだけでも相手(フィードバックするコーチ役)はあなたの気持ちや価値観、コミュニケーションスタイルを理解しやすくなり、“対話”の一歩になるかもしれません。
次回は、私がフィードバックを受け取れるようになれたきっかけ、事例をご紹介します。
(次回は6月第4週号掲載)
〈プロフィル〉竹内 健(たけうち たけし)
エグゼクティブ・コーチ(COACH A USA 取締役 CFO)
PricewaterhouseCoopers LLPにて異例の日米5都市を異動しつつ、公認会計士として日米欧の企業や経営者へのサポートを行う中で、ソリューションの提供だけでなく対話を通じた人 への投資があってはじめてクライアントのパフォーマンスが発揮されることを痛感し、これまた異例の会計士からの転身をはかり現職。【ウェブ】www.coacha.com/usa/