〈コラム〉米日教育交流協議会・代表 丹羽筆人「在米親子にアドバイス」日米の教育事情

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現地校と補習校の大切な役割

双方での前向きな取り組みが帰国時に奏功する

長い夏休みが終わり、現地校の新年度が始まりました。3〜4週間が過ぎ、そろそろ新しい生活のリズムが整ってきたのではないでしょうか。ただし、新年度からミドルスクールやハイスクールに進学した場合には、勉強が難しくなったり、宿題が増えたり、クラブなどの活動時間が増えたりして、夏休み前の生活とは一変し、忙しくなっていることでしょう。補習校では、夏休み明けから急に宿題の提出率が下がるというケースも見られ、現地校の学習や活動が厳しくなったのだと実感することもしばしばです。しかし、現地校にも補習校にもそれぞれ大切な役割があります。
現地校は日本の学校への入学資格の条件となる公教育です。その学習内容は当該学年にとって重要で確実に習得する必要があります。また、よい成績を収められるよう努力することも大切といえます。
入学試験の書類選考では、現地校の成績証明書を提出します。日本の評定平均値に当たるGPAが合否判定に大きな影響を与える学校は多くはありませんが、GPAが高い方が試験官の印象がよいのは言うまでもありません。中には満点値の比率を点数化して合格の基準として利用する学校もあります。
さらに、現地校での学習成果は、英語力となって表れます。英語力が高いことは、帰国時の入学試験に大いに影響します。例えば、中学入試では英検2級合格、高校入試では英検準1級合格やTOEFL iBTのスコアが79以上であると、特別入試枠での受験が認められるという学校もあります。
大学入試ではTOEFL iBTのスコアが出願の基準点となっている学校もありますし、書類審査での合格ラインが、TOEFL iBTで100〜110、SATで2000前後というような学校もあります。このように現地校の学習は、入学試験にアドバンテージを与える英語力を磨くためにも重要なのです。
一方で、補習校は公教育ではありませんし、そこでの教育課程を修了したことが日本の学校の入学資格となることはありません。ただし、成績証明書や学校長の推薦書を参考にして日本語力を判断するということはあります。こう見ると、補習校での学習意義はそんなに大きくないようにも感じますが、補習校での履修は、帰国後の学習の適応や入学試験のために必要な日本語での学力を習得したり、学校生活になじむために必要な学齢相応の考え方や仲間とのチームワーク、そして日本語での会話力や日本的なマナーを身につけたりするのに大切です。それに、現地校で苦労している場合には、補習校が安らぎの場になることもあります。
平日は現地校、土曜日は補習校と週6日間も通学するのは大変ですが、双方での学習や生活への前向きな取り組みが帰国時に奏功するのです。
(次回10月27日号掲載)(「WEEKLY Biz」2012年9月22日号掲載)
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