〈コラム〉米日教育交流協議会・代表 丹羽筆人「在米親子にアドバイス」日米の教育事情

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大切な現地校と補習校との両立

補習校は日本の学習の基礎、日本語と日本文化を学ぶ重要な場所

米国の現地校が新年度を迎えて1カ月が経とうとしています。それぞれの子どもが進級または進学することによって、夏休み前とは異なった生活を送っています。学習内容が難しくなったり、宿題が増えたり、クラブ活動の練習が厳しくなったりして、かなり忙しくなっている子どももいます。帰国を控えている場合には、日本の学校の受験勉強もする必要がありますし、高校生の場合は大学進学に必要なSATやTOEFL、ACTなどの勉強もしなければなりません。とても時間が足りないと実感することでしょう。
この時期は補習校をやめたいが進学に不利になることはありますか、という相談もよくあります。確かに補習校の高校生や中学生には宿題に手が回っていないのを感じる生徒も見受けられます。また、現地校の活動やテストの受験のために欠席や遅刻、早退が目立つ生徒もいます。このような状況で継続するのは難しいと思われることも十分理解できますが、それでよいでしょうか。
まず、補習校をやめても進学に不利にはなりません。入学するために補習校の在籍証明書や成績証明書の提出が必要な学校はほとんどありません。補習校は公教育というカテゴリーに入る学校ではないからです。しかし、日本の学校に入学後は日本語で学習しなければなりません。また、学校は文部科学省の定めた学習指導要領に基づき授業を進めています。日本の教科書を使って学習指導要領に沿って学習を進める補習校での学習がとても大切です。入試難関校の受験ということを考えると教科書よりも難しい問題演習が必要になりますが、入試のための学習の基本も教科書の学習内容です。まずは教科書をしっかり学ぶことが大切です。
また、補習校には授業以外にも学校行事がありますし、海外でも日本の学校に準じた経験ができるよう工夫されています。礼儀作法や言葉遣い、日本的なものの考え方も教えられます。それに補習校には日本から来て間もない子どももおり、そのような子どもとの交流は帰国後に国内の子どもと接するためにとても役に立ちます。
一方で、日本に在住する予定のない子どもにとっては、補習校が日本語や日本文化に触れることのできる貴重な機会です。補習校の宿題に手が回らなくなっても、休むことが多くなっても、出席するだけでも日本語や日本文化の環境に身を置くことになりますので十分効果があります。
現地校との両立はとても大変ですが、補習校はできる限り継続させたいですね。
(次回は10月第4週号掲載)(「WEEKLY Biz」2013年9月28日号掲載)
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