着床前診断21~最新の性染色体(男女産み分け)と22対の常染色体の着床前診断方法(9)~
フレッシュ受精卵移植と冷凍受精卵移植における成功への分析(1)
前回までのリポートでは、着床前診断を行う場合、一つのサイクルにおいて採卵され、受精卵になっても、それぞれの受精卵は成長のばらつきがあるため、一斉に同時期の判断のための比較ができず、冷凍されることが余儀なくされること、戻ってきた結果と照合し、別サイクルで仕切り直しての移植が行われることをお伝えしました。そして、このことは、今までの伝統的な観念である“フレッシュ受精卵は間違いなく冷凍受精卵より優れる”とされることと矛盾しますが、必ずしも、受精卵が冷凍され別サイクルで移植することは悪いニュースではないと最近の臨床結果で分かってきましたこともお伝えしました。
今回からフレッシュ受精卵移植と冷凍受精卵移植における成功への分析について詳しく説明していきます。
端的に、「冷凍受精卵の方がフレッシュ(受精卵)で移植するより妊娠率が良い」と言われたと、患者様に理論的過程を理解させず、結果論のみを話すクリニックがあるようですが、この命題には背景があることを理解する必要があります。
生殖医療専門家ではない患者様に「冷凍受精卵の方がフレッシュで移植するより妊娠率が良い」と医師が説明せずに結論のみを伝えると、まるで、冷凍することによって、フレッシュの受精卵より質が良くなり、着床しやすい良い受精卵になるように聞こえ、誤解を招きます。
フレッシュ受精卵と冷凍受精卵の受精卵のみの質の比較であれば、フレッシュ受精卵の方がより好ましいという概念は変わりはありません。どれほど、冷凍技術が日進月歩で進化したとしても、冷凍→解凍という二つの手続きが増えることでリスクが発生、上昇します。このことは、どのような冷凍可能な食品を考えていただいても分かると思います。
しかし、先進生殖医療において、受精卵を着床させるためには、三つの大きな必須要件が複合しています。それは、(1)受精卵の質(フレッシュ受精卵であるか、冷凍受精卵であるかも、この条件内)、(2)内膜の受け入れ(受容力)状態、(3)受精卵と内膜との相互影響作用―を指します。(次回に続く)
(次回9月第1週号掲載)
〈プロフィル〉清水直子(しみず なおこ) 学習院大学法学部卒業、コロンビア大学で数学を学び、ニューヨーク大学スターンスクールオブビジネスでMBAを取得。マウントサイナイ医科大学短期医学スクール修了。メリルリンチの株式部で活躍し、2003年さくらライフセイブ・アソシエイツを設立。
【ウェブ】www.sakuralifesave.com/