出生前診断29
~妊娠第2期:セカンド・トリメスターの出生前検査(2)~
「米国最先端臨床現場から」海外治療コンサルティングリポート 第64回
前回からセカンド・トリメスターの出生前スクリーニングと診断の説明を開始し、15週から20週の間に行われる4種の血液検査によるQUAD(クワッド)スクリーニングの説明を行っています。
QUADスクリーニングの代わりにTriple(トリプル)スクリーニングを行う医師もいることを前回触れましたが、この二つ検査の差はInhibin-A(インヒビン─A)の検査が入るかどうかの違いです。Inhibin-Aは胎盤、及び、卵巣から作られる、分化や成長に関与しているプロテイン(タンパク質)ですが、正常値から乖離(かいり)している高い数値はダウンシンドロームの可能性を示唆します。つまり、ダウンシンドロームの可能性により焦点を置いたスクリーニングと言えましょう。
ドクターオフィスにおける妊婦の採血を伴うQUADスクリーニングの所要時間は5分から10分です。血液は検査場に送られ、結果は数日で出てきます。
今までもスクリーニングテストは“スクリーニング”に留まり、診断ではないことは再三説明してきていますが、このQUADスクリーニングも診断ではありません。実際、このスクリーニングテストの確率の算定方法は、採血された血液検査からのみ判断され、結果として発行されているものではないことも患者は知っておくべきことでしょう。血液分析以外の要因として、年齢やどの民族であるか、などからも算定され、遺伝子異常を持つリスクの可能性が表示されます。
このQUADスクリーニングの擬陽性率は高いと言われています。例えば、遺伝子異常がある可能性が高い、と出た50人の妊婦のうち、実際、本当に遺伝子異常があるケースは1〜2ケースのみに過ぎません。標準値から逸脱してリスクがある、と出る理由は、多胎妊娠である場合にホルモン値が高くなるためにホルモン値が高い場合、採血の時期が多少ずれている胎児である場合や、単に検査が間違っている場合など、さまざまです。この誤差は上右記の50人のうち48〜49人から判明しています。
もしも、多胎妊娠ではなく、一人の胎児の妊娠で、妊娠期の数え方も正確である場合に、疾患を持つリスクが高いという結果が出てきた場合には、羊水検査のフォローアップをお勧めします。
(さくらライフセイブアソシエイツ代表・清水直子)
【執筆者】清水直子(しみず なおこ) 学習院大学法学部卒業、コロンビア大学で数学を学び、ニューヨーク大学スターンスクールオブビジネスでMBAを取得。マウントサイナイ医科大学短期医学スクール修了。メリルリンチの株式部で活躍し、2003年さくらライフセイブ・アソシエイツを設立。