代理出産3
「米国最先端臨床現場から」海外治療コンサルティングリポート 第75回
医療コンサルタントである弊社にいただくお問い合わせ件数でトップ5に入る代理出産について説明を開始しています。前回=1月12日号掲載=のリポートでは、「代理出産が必要な当事者は赤ちゃんが欲しいという切実な願いがあり、藁(わら)にもすがる思いで方法論を模索しているため、この動機と情報の少なさを利用し詐欺を行う環境を作り上げている事実がある」ということもお伝えしました。
被害に遭った後、弊社へのお問い合わせをいただくことがよくあります。よく耳にするコメントは「情報量が少ないので仕方がなかった」「相談する人がいない」「どこに相談すればよいか分からない」などで、「とにかく赤ちゃんが欲しいのでだまされてもいい」とおっしゃる方もいらっしゃいます。
自己卵子を使用することが前提である場合、代理出産の依頼をする以前に、ご本人の生殖能力の検査を含めた体外受精を行うことが前提になりますが、的確なアドバイスなしに、まず代理出産契約のために海外まで渡航せよ、という危険なエージェントが存在するようです。代理出産は、代理母という第三者が介入する高額な治療です。重要な生殖医療の知識がないエージェントに依頼することは、誤った方法論を行う危険があるだけではなく、経済的にも全く無駄になり得るため、十分な配慮が必要です。
特に、お子さんが欲しい場合に必ず代理出産が必要であるロキタンスキー症候群の患者さまや子宮がんで子宮摘出をなさった患者さまの場合は特に的確な医療アドバイスが事前に必要です。子宮がないため、月経がないので、自己卵子を使用する場合は、体外受精の準備から通常の患者さまとは方法が変わってきます。また、子宮がないことから、卵巣が通常ある位置から上昇していることが多くのケースで見られます。その場合、膣(ちつ)からの採卵ができないことも多々あります。さらに、代理出産依頼に進む価値があるかどうかを判断する、卵胞数を診る検査や、体外受精のための排卵促進剤投与中の超音波モニターも通常の経膣からの方法が不可能なことも多くありえます。
このような専門的知識が必要なことから考えても、代理出産の依頼時には、医療的知識は豊富であるか、専門家を利用する必要があります。
(さくらライフセイブアソシエイツ代表・清水直子)
【執筆者】清水直子(しみず なおこ) 学習院大学法学部卒業、コロンビア大学で数学を学び、ニューヨーク大学スターンスクールオブビジネスでMBAを取得。マウントサイナイ医科大学短期医学スクール修了。メリルリンチの株式部で活躍し、2003年さくらライフセイブ・アソシエイツを設立。