ブラウンストーンのタウンハウス
豊かな歴史性や希少性で富裕層に人気
ニューヨーカーはブラウンストーンのタウンハウスの住人になることを夢見ています。アッパーウエストサイド、ブルックリンハイツ、フォートグリーン、パークスロープ、キャロルガーデンズに多く見られる堂々としたデザイン性の高いチョコレートブラウン色の家々はその豊かな歴史性や希少性もあり富裕層を引き付けています。
誤解されがちですが、ブラウンストーンタウンハウスはほんの一部のみがブラウンストーンで出来ています。ほとんどの人が“ブラウンストーン”と呼ぶタウンハウスは、ベニヤ板状のブラウンストーンを外壁に用いたレンガ造りのタウンハウスです。建物の材料としてのブラウンストーンには高い信頼性がありません。柔らかく割れやすく崩れやすい性質を有します。
ブラウンストーンは砂岩の一種であり、三畳紀・ジュラ紀に出現しました。切り出されると石は実際にはピンク色ですが、それが空気にさらされると茶色の色合いを深めます。ときにブラウンストーンは芸術作品と同様に風化のダメージを修復する必要があります。
ニューヨークのブラウンストーンの大部分は同じ場所から来ました。コネティカット州中央のポートランドに採石場がありました。19世紀にブラウンストーンが初めて建築材料として採用され採掘が始まり、石はハドソン川とイースト川に沿って船で運ばれました。
19世紀半ばに最初のブラウンストーンのタウンハウスが建設されました。のちに産業革命による蒸気機関が採石と輸送に採用され石はより安価になり、高級感を欲しがっていた中産階級のタウンハウスのオーナーにはうってつけでした。石灰岩、花崗(かこう)岩、大理石などのそれまでの素材の価格よりもはるかに安価で、木造やレンガ造りにはない自然石のぜいたく感が味わえたからです。
2012年にはポートランドのブラウンストーン採石場が石の枯渇により閉鎖されました。茶色の石が採石されている場所は世界中にありますが、専門家によるとポートランド産と同種の石はまったくないと言われています。今後ブラウンストーンのタウンハウスが新築される可能性は少ないと言えるでしょう。
ブラウンストーンの特徴的な玄関へと続く長い階段が造られた訳は、セントラルパークが完成した1869年ごろの移動手段だった馬車が落としていく馬ふんが、まだ車道と歩道に分かれていない路上にあふれ、それを踏まずに馬車と家とを乗り降りするためでした。階段の登り口にあるもう一つのストリートレベルの入り口は召使い用として使われていました。
(タイチ不動産 茂古沼孝)
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