重い荷物やベビーは「近づいて抱っこ」がコツ

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姿勢のお話(4)

〈コラム〉瓜阪美穂「理学療法士が教えます」 身体が痛い本当の理由 【第22回】

重い荷物を持つ時にどうすれば身体の負荷を減らせるか、コツは二つあります。一つ目は荷物の重さを出来るだけ自分の身体の中心に近寄せることです。

ボーリングのボールを持つイメージをしてみましょう。手を前に伸ばしてボールを持つと首や肩、腕に負担がかかるのが分かるでしょう。それに比べてできるだけ胸の近くに寄せると楽に抱えることができます。フルーツなどを入れた籠を頭の上に乗せて歩くのも同じ理由です。荷物が中心から離れる程重みが増すので、身体の中心、おへそ辺りに寄せる事で余計な負担をかけずにすみます。

赤ちゃんをベッドから抱き上げる場合。多くの方が腕で赤ちゃんを持ち上げてから、ハグの状態になっているのではないでしょうか。こうするとボーリングボールを遠くで持った状態と変わりません。正しくは足をなるべく広げ、膝を曲げておへそが赤ちゃんのいる高さに下がるまで腰を落とします。そこでまず赤ちゃんを胸にくっつけ、「ボーリングボールの重さ」を抱きながら足を踏ん張って立ちあがります。下ろすときも、ハグを解くのは赤ちゃんをベッドに置いてから。このようにすると自分の腰の負担も減るし、赤ちゃんにとっても安心する動きとなります。

二つめのコツは常に背面のまっすぐな線を保つことです。ゴルフクラブやモップなどの棒を背中に当ててみましょう。頭・背中・お尻の3カ所がまっすぐな線で繋がった状態で動きます。棒は前後に倒れても良いし、左右に回転させても良いのですが、3点のどこかが棒から離れないようにしましょう。このようにすると、足を十分に開かないとおへそが赤ちゃんに当たらないことが分かるでしょう。この、股関節が曲がることで腰に重みがかからず、代わりに足に必要な負担がかかり腰を守ります。多くの日本人は膝を内側に閉じる習慣があるのでこの正しい姿勢に対して違和感を感じるかもしれませんが、実は腰や首を痛めない身体にとっては理想的な持ち上げ方法です。

勿論この持ち上げ方は赤ちゃんだけではなく日常の重いブリーフケースなどちょっとした物でも同じように行ってみて下さい。床にあるバッグなどもおへそを近くに寄せてから立ち上がるようにしましょう。慣れるまでは足が疲れると思いますが、最終的には健康的な身体になる良い習慣が身に付きます。腿の筋肉痛をゴールとして深く屈み、腰を守りましょう。

瓜阪美穂〈筆者プロフィル〉
瓜阪美穂(うりさか みほ)  理学療法博士、整形臨床スペシャリスト。ニューヨーク州立大学ビンガムトン校を卒業後、南カリフォルニア大学理学療法博士課程を修了。ブロードウェイミュージカルのダンサーの理学療法士としても活躍中。米国の理学療法により、自身の身体に興味をもち、正しい動作を生活に取り入れることを目的に治療や指導を行っている。
★身体に関する皆様からの質問も受け付けています。
【ウェブ】https://omptny.com/ja/

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