心臓を守るために縮こまった姿勢になることも

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猫背のお話(4)
瓜阪美穂「理学療法士が教えます」身体が痛い本当の理由【第37回】

これまで3カ月かけて猫背の原因についてお話ししてきました。今月知っていただきたいのは猫背改善が実は仕事のパフォーマンスや健康とすごく関わっていることです。

猫背は肩凝りや首の不快感とも関連が強く、その代表が頭痛です。姿勢が悪いと首の周りが緊張して締め付けられ、内頸(けい)静脈や椎骨動脈が圧迫されて脳や脊髄への血流が悪くなります。デスクワークを長く行っていると頭がぼーとしたり、頭の回転が遅くなるような状態もこの血流の悪さによるものです。さらにこの脳や脊髄など中枢神経系への血流減少が長年続くと、多発性硬化症やアルツハイマー病などを引き起こす原因の一つになると言われています。猫背が解消されると、この小さな不調から大きな問題まで変わる可能性が高いのです。

さらに猫背はスポーツパフォーマンスにも大きく影響します。猫背は首や肩の問題だけでなく、下半身の動きの邪魔もします。8月10日号掲載の同コラムでもお伝えしたように、猫背を改善するために腰を反って姿勢を変えると腰痛になります。必要な腹筋が働かないためコアを適切に使えず、体が安定しないのでうまく力が入らなくなります。その上、背骨の形が変わると脊髄が圧迫され下半身の神経も影響を受け、股関節や足首の可動範囲が小さくなります。もし前屈ができず足が突っ張ると感じていたら、それは足の筋肉の問題ではなく首などの背骨からきているのかもしれません。脊髄の圧迫がなくなると、例えばスクワットが深くできるようになったり、下半身にしっかりと力が入るようになります。

このように猫背を改善できると仕事がはかどり、コアや足の反射神経も改善するので、さまざまな面で良い効果があります。そしての脳への血流が良くなるので、気持ちが前向きになっていくのです。瞑想(めいそう)や心臓の筋膜をほぐすなど、ゆっくりと猫背を改善して健康的に生活を向上していきましょう。

(次回は3月14日号掲載予定)

瓜阪美穂〈筆者プロフィル〉
瓜阪美穂(うりさか みほ)  理学療法博士、整形臨床スペシャリスト。ニューヨーク州立大学ビンガムトン校を卒業後、南カリフォルニア大学理学療法博士課程を修了。ブロードウェイミュージカルのダンサーの理学療法士としても活躍中。米国の理学療法により、自身の身体に興味をもち、正しい動作を生活に取り入れることを目的に治療や指導を行っている。
★身体に関する皆様からの質問も受け付けています。
【ウェブ】https://omptny.com/ja/

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