酒造りの老舗「宝酒造」の米国法人
宮國洋一郎社長に聞く
海外での実績、事業比率を増やしていきたい
創業170年の歴史を誇る酒造りの老舗「宝酒造」の米国法人として、米国や欧州の多くの人に“日本の酒”のおいしさ、楽しみ方を伝え広める米国宝酒造「Takara Sake USA Inc.」。日本食ブームに伴い、いまや海外でも多くの人々に親しまれている日本酒や焼酎だが、「日本で築き上げたブランド名を決して汚さぬよう、日本と同じ品質レベルが保てるよう、必死の努力を続けてきた」と同社の宮國洋一郎社長は話す。
同社は1982年、前身の沼野酒造を買収し、翌年、米国宝酒造としてカリフォルニア州で清酒の製造を開始、ことしで30周年を迎える。同州バークレー市に製造所を構え、同社の日本酒の9割をここで製造、今では海外清酒市場ナンバーワンの地位を確立した。
米国内の日本食レストラン数に比例し、同社商品の販売数も右肩上がり。焼酎は依然在米日本人からの人気が高いものの、日本人以外の人々向けのチャネルも拡大できるよう、全米各州に有力なディストリビューターを確保し、商品の切り口、営業手法を日々模索している。
綿密なマーケティングの下、米国人の嗜好(しこう)や生活スタイルに合った酒、飲み方を提案。“酒エキスパート”として、料理とのペアリングや日本酒を使ったカクテルレシピなどをイベントや同社ウェブサイト上で紹介。既に日本酒カクテルを提供する米系レストランやバーなども多い。「魚介系の料理には日本酒が一番」と宮國社長。「特にカキの甘みを引き出すため、オイスターバーにはぜひ置いてほしい」と推奨する。
甘くて口当たりの良い「にごり酒」は米国人に人気で、米系スーパーマーケットにも置かれているほど。そして、一番の日本酒の売れ筋はやはり主力商品「松竹梅」。名称もそのままに、10年かけて本場日本と変わらない味を作り上げてきた同商品は2011年、米国産の日本酒としては初めて全米日本酒鑑評会で金賞を受賞した。
飲料用以外に調味料としての清酒やみりんも販売。隠し味や臭み消しなどとして重宝されるみりんだが、米国での認知度はまだ低い。しかし、市販の冷凍食品や加工食品の多くには同社の「タカラみりん」が使用されており、驚くことにイスラエルでの需要がとても高いのだそう。
「日本の食文化を背負う日系企業として、海外での実績、海外事業の比率を増やしていきたい」と宮國社長。「いずれかは、われわれが日本の親会社を食わしていけるほど成長させたいですね」と今後の展望に目を輝かせた。
【ウェブ】www.takarasake.com
(「WEEKLY Biz」(ニューヨーク)2013年6月22日号掲載)