【インタビュー】藤竜也

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BOUT. 328

俳優 藤竜也に聞く

JS主催のJAPAN CUTS 2024 授賞式で来米

62年のキャリアで大事な作品に

ニューヨークの夏の風物詩として定着したジャパン・ソサエティー(JS)主催の日本の新作映画を集めた映画祭「JAPAN CUTS~ジャパン・カッツ~2024」。同映画祭で、生涯功労賞を受賞した映画界のレジェンド・藤竜也さんに、お話を伺った。

この度は、(「ジャパン・カッツ」での)生涯功労賞、受賞おめでとうございます。

藤 生涯功労賞、響きだけでもなんかすげえなって、私がそんなものをいただいていいものかっていうのが正直な感想ですし、大体ね、人に何か褒めてもらう時は、当然と思って褒めてもらうことはないですよね。たいていが俺が褒めてもらえるの? というような感じですね。そういううれしい驚きで図々しく(賞を)いただきにまいりました。でも、この『大いなる不在』(主演作品)っていう、俳優としての晩年に素晴らしい仕事をさせていただいて、おそらく私の62年のキャリアの中で、2本か3本の中に入る大事な作品になりました。俳優というのは1人では何もできませんから、整った器の中に入って初めて、いい仕事をさせてもらえます。そういったことで素晴らしい入れ物の中に交ぜてもらいまして、ここでこういう賞をいただいたり、サン・セバスティアン(国際映画祭コンペティション部門で、日本人初となるシルバー・シェル賞=最優優賞=受賞)で褒めていただいたりっていうような大変幸せな結果になりました。

今回、ニューヨークで、この作品(『大いなる不在』)で賞を取られたこと、どのように感じられていますか。

藤 ニューヨークで私が参加した作品を褒めていただけるっていうのは、私にとってはちょっと感慨深いストーリーがあります。

ぜひお聞かせください。

藤 私はね、実は映画人として2度目のニューヨークです。1度目は『愛のコリーダ』という作品がニューヨークフィルムフェスティバルに招待されて、リンカーンセンターに行ったんです。その時、大変残念ですが、映画は上映されませんでした。それはニューヨークの検閲を通らなかったんですね、作品が。はるばる日本から来て、大変がっかりしましたね。検問を通らないってことは、参加している自分も、罪人になったような気がしましてね。そして、50年経ちました。今度は出演作品が上映されて、私は賞をいただいています。それと同時に、明日Metrographという劇場で『愛のコリーダ』が上映されます。つまり私は『愛のコリーダ』を50年遅れで、ニューヨークで披露する、ということができるわけですよね。それはやっぱり、感慨深いですね。うん。なんか、「映画よ、ありがとう」って言いたいですね。

JAPAN CUTSの会場で語る藤竜也さん(©Ayumi Sakamoto)

JAPAN CUTSで登壇し、語る藤竜也さん(中央)

『大いなる不在』海外版ポスタービジュアル

『大いなる不在』海外版ポスタービジュアル

藤竜也(ふじ・たつや) 職業:俳優
1941年生まれ、神奈川県出身。『愛のコリーダ』(1976)で報知映画賞最優秀主演男優賞を受賞、『村の写真集』(2003)で上海国際映画祭最優秀主演男優賞を受賞、『龍三と七人の子分たち』(15)で東スポ映画大賞主演男優賞受賞。ほか『愛の亡霊』(1978)、『アカルイミライ』(2002)、『それいけ!ゲートボールさくら組』(23)など、100本以上の映画に出演。『大いなる不在』で、第71回サン・セバスチャン国際映画祭コンペティション部門において、日本人初となるシルバー・シェル賞(最優秀俳優賞)に輝いた。公式サイト:www.fujitatsuya.jp/

 

ジャパン・ソサエティーで行われたイベントの模様(©Ayumi Sakamoto)

ジャパン・ソサエティーで行われたイベントの模様

2024年8月3日号掲載)

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