フジコ・ヘミング(3)

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自分が素晴らしいんだって、最近分かってきた

「ガチ!」BOUT.105

9月初旬から全米主要都市を巡るソロコンサートツアー中のピアニスト、フジコ・ヘミングさん。世界各国で活躍し、多忙を極めるフジコさんに、ニューヨークでのコンサート終了直後、独占インタビューを決行。お話を伺った。(聞き手・高橋克明)

 

NYで2年ぶりにリサイタル

お疲れさまでした。コンサート終えられて今の率直な感想を。

フジコ 私は今回ね、ロスから4日かけて汽車(アムトラック)で来たんです。(汽車の旅は)素晴らしかったですよ。よく寝られたからね。いつも横たわっては(起きて、窓の外を)見て、横たわっては見て。窓から見てたあれ(景色)が良かったから、疲れなかったんじゃないかな。

飛行機、お嫌いなんですか。

フジコ 嫌いだし、耳がおかしくなるから、保障できないんですよ。1週間くらい聞こえなくなっちゃうこともあるからね。そんなことになっちゃったら今日(のコンサート、でき)なくなっちゃうからね。でも、みんなに「汽車はダメだよ、ギャングが出てくるから」って脅されたんですけどね、あんなの嘘ですよ。素晴らしい旅でした。

2年ぶりのアリス・タリー・ホールでの…。

フジコ (無視して)だって、ね! あたしがもらった部屋(寝台車)って馬が3頭入るくらいのおっきい部屋でね。ヨーロッパではいつも夜汽車なんかで旅行してるんだけど、(寝台が)すっごいちっちゃくてデブだったら絶対、お手上げね。(ドアを)開けたって入れりゃしないくらい狭いんですよ。

今回は快適な旅だったと。今日のコンサートは

フジコ (無視して)アメリカの人って大きい人は象くらい大きいじゃない。あれじゃ、お手洗いにも入れりゃしないですよ。だからすごくゆったり(とした部屋)でね、馬でも入れるくらい。

3頭ですよね。

フジコ そう! 全てが楽だったです。素晴らしかったです。

(笑)。2年ぶりのアリス・タリー・ホールでのコンサートでしたが、いかがでしたか。

フジコ 今日はすごいうれしかったです。お客さま、みんなの顔が(舞台上からでも)見えてね。2年前はすっごい風邪をひいて、あたしの周りに鼻紙が散らばってた(くらい)。その時は客席も真っ暗(に見えてました)。

2年前、その直後にもインタビューをさせていただいたんですけど、フジコさんからその風邪菌をいただき、僕も数日寝込みました。

フジコ そうでしょ(あっさり)。だから今日はね、その思い出が全っ部、塗り返されたくらい。本当にうれしかったです。

演奏後はスタンディングオベーションの嵐でした。

フジコ 今はどこの(国の)会場でもスタンディングオベーションですよ。日本以外はね。日本人の気質は静かですよ。でもそっちの方が好きかもしれない。ヨーロッパだと反応はもっとバタくさいですよね。

今回は先の大震災へのチャリティーコンサートの一環で開催されたわけですが。

フジコ あのころ、毎日のようにテレビで余震(の情報)が出るじゃない。本当に嫌でした。あと、人間だけ逃げて犬も猫もみんなほっぽり投げたままだったでしょう。動物愛護団体の人たちは普通、怖くて行けないような立ち入り禁止区域まで入って行って、(置き去りにされた)犬や猫をトラックに入れて、(東京まで)運んでみんなが分け飼ってるんですよ。そうやって助けたの。みんな素晴らしいですよ。

以前、「人前で弾けなくなっても犬猫の前で弾くのもいいかもね」とインタビューでおっしゃってたのを覚えています。

フジコ そうね、それの方がいいかもね(笑)。うっとりね。

まだまだ聞いていたいファンも後を絶たないのですが、いつまで現役で弾き続けていただけるのでしょうか。

フジコ 知らないね(笑)。今、ますます(調子が)上がってきた。なぜかっていうと、自分が素晴らしいんだっていうことが分かってきたんですよ、最近。他に敵がいないっていうことが分かってきたから、すごい強いですね。いくらでも足引っ張られて、いくらでも影で悪口言われてもあたしは全然(構わないんですよ)。

なるほど。最後に読者にメッセージをいただけますか。

フジコ 今年は、なでしこジャパンもアメリカに勝ったし、日本人は本当に素晴らしい勤勉な国民ですから、ヘンな劣等感なんて持たないでね、頑張ってやってください。

またニューヨークには来ていただけますか。

フジコ もちろん!

汽車で4日間かかっちゃいますけど(笑)

フジコ (笑)。来年もぜひ、ね。

 

Fuzjko Hemming(フジコ・ヘミング) 職業:ピアニスト

日本人ピアニストの母と、スウェーデン人建築家の父のもと、ベルリンで生まれ、幼少のころ日本へ。母の手ほどきでピアノを始め、レオニード・クロイツァーに師事。17歳でコンサートデビューを果たし、東京音楽学校を経て、NHK毎日コンクールで入賞。28歳でベルリンへ留学。レナード・バーンスタイン氏に認められリサイタルのチャンスを得るが、風邪による高熱で聴力を失う。失意の中、スウェーデンへ移住した後ドイツへ。その後聴力は40%ほど回復。1995年、帰国。日本で大ブレークし、デビューアルバムは200万枚を売り上げる。ゴールデンディスク大賞を4度受賞。日本国内をはじめ、世界各地で積極的に公演している。
公式サイト:http://fuzjko.net/

 

〈インタビュアー〉
高橋克明(たかはし・よしあき)
専門学校講師の職を捨て、27歳単身あてもなくニューヨークへ。ビザとパスポートの違いも分からず、幼少期の「NYでジャーナリスト」の夢だけを胸に渡米。現在はニューヨークをベースに発刊する週刊邦字紙「NEW YORK ビズ」発行人兼インタビュアーとして、過去ハリウッドスター、スポーツ選手、俳優、アイドル、政治家など、400人を超える著名人にインタビュー。人気インタビューコーナー「ガチ!」(nybiz.nyc/gachi)担当。日本最大のメルマガポータルサイト「まぐまぐ!」で「NEW YORK摩天楼便り」絶賛連載中。

 

(2011年10月1日号掲載)

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