【独占インタビュー】RISE(ライズ)伊藤 隆代表 格闘技界の上位概念を変えたい

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伊藤 隆

BOUT. 307

立ち技打撃格闘技団体 RISE(ライズ)伊藤 隆代表に聞く

世界的キックボクシング団体「GLORY」と提携を発表

今年の初め、日本の立ち技打撃格闘技団体「RISE(ライズ)」が世界的キックボクシング団体である「GLORY(グローリー)」と提携することを発表。格闘技界にとって衝撃的なニュースが流れた。これにより双方の団体の選手が交流し、世界のキックボクシング競技レベルが格段と向上されることが期待される。また両団体の選手が対抗戦をするなど、格闘技ファンにとっては、夢のカード実現の機運が高まってきた。「RISE」の伊藤隆代表にお話を伺った。 (聞き手・高橋克明)

RISEとGLORYの提携が正式に発表されました。そこに至るまでの経緯を教えてください。

伊藤 数年前から、国際弁護士の入江先生から話を頂いていまして。GLORYサイドが、また日本で大会をやりたい、と。ここ半年間で一気に詰まったという感じですね。(GLORYは)過去2回、日本で大会をしてますね。もう一度GLORYの熱を再認識させるためにも、いきなり単体大会ではなくてRISEを通じて盛り上げていくのが得策ではないかと提案させていただきました。

去年11月、大阪大会で原口健飛VSペットパノムルン(・キャットムーカオ)戦が決まったあたりから、もう動いていた感じですか。

伊藤 あの試合も、きっかけの一つとして一気に近付くいたって感じですね。

具体的な提携内容は、まずは選手間の合流でしょうか。

伊藤 そうですね。GLORYはやっぱり中量級から重量級が主力で、RISEはその逆で、中軽量級が力があるんですね。お互いの得意な部分と足りない部分を合わせて充実させていきたいと。そうすれば面白いんじゃないか、っていう意見ももらっております。

GLORYサイドにインタビューした際も「一緒になるから、全部(の層を)フォローできるんだよ」という話でした。

伊藤 そうだと思っています。全体的に層も厚くなるでしょうし、逆にうちも上のクラスを作っていくというモチベーションが上がってくる。逆にGLORYも今まで男子は選手は65キロ以下の選手はいなかったですから。相乗効果で選手層も厚くなって、レベルも高くなっていくと思っています。そして世界に通用する日本人選手を育成していく。

興業的には、例えば共同でヨーロッパ開催であったり、東京でGLORYと共同開催する可能性もあるのでしょうか。

伊藤 まずはGLORYサイドが日本でもう一度開催したいという思いが強いので、今年、もしくは来年にGLORYの熱を再熱させることをサポートしたいとは思っていますね。GLORYが単発で(興業を)やる時は全面的にバックサポートをしていきたいです。

GLORYで注目の選手を何名か挙げていただけますか。

伊藤 やっぱりヘビー級ですね、リコ(・ヴァーホーベン)や、もちろんバダ・ハリだったり、80キロ以上の選手は非常に魅力的ですよね。最初、先方と話をした時に、リコ対アリスター(・オーフレイム)を4月2日のRISE ELDORADOでやらないかっていう提案をされて、びっくりしましたけどね。

GLORYにとっては切り札的なカードですね!

伊藤 そうなんですよ。それを(RISEで)やらないかって。びっくりして、いきなりはもったいないかな、って(笑)。でもその気持ちがうれしかったですね。そう言ってくれる気持ちは本物だな、と。

いずれ、またリコ・ヴァーホーベンが東京で見られるかもしれない。

伊藤 ファンは喜びますよね。今年はヘビー級選手たちも招聘(しょうへい)したいですね!

もう10年ぐらいヘビー級のド迫力ファイトを見られていない日本のファンにとって、GLORYが開催されるだけでもインパクトはすごいですね。

伊藤 やっぱり、分かりやすいですよね。2メートルや190センチ、100キロ以上、150キロの選手がぶつかりあって、倒し合ったら、それだけで迫力を伝えられますよね。

そして中量級では、またペットパノムルンの来日も期待できる、と。今現在、RISEの選手で「打倒ぺット」として、代表が思い浮かぶ選手はどのあたりでしょう。

伊藤 やっぱり負けた原口(健飛)もそうですし、白鳥(大珠)、直樹や日本の65キロ選手が切磋琢磨しTeam Japanとして世界と戦う。決して原口も届かない距離じゃなかったんですが、やっぱり世界の強豪に飲まれた部分もあったと思うんですよ。本人もそれで距離が分かったと思う、届かない距離ではないと、次は(距離を)縮めて、戦えるような形にしてもらいたいと思います。

この先、夢が広がりますね。

伊藤 全体的な底上げになり、シンプルに面白さを伝えられると、あとは、強者が世界中から集まってくる。若い選手をどんどん育成すること、さらに強くて魅力のある選手にはチャンスを与えていく大会にしたいですよね。そしてRISEのグローバル化ですね。

そして、いよいよ4月2日、那須川天心選手のRISEファイナルマッチがあります。今、那須川選手に対してどんなお気持ちですか。

伊藤 寂しいうんぬんよりも、よくやってくれたって気持ちですね。今まで無謀な試合も組んできたので、それを彼はやります、って感じでやってきて、ともに時代を作ってきた仲間という感じですね。天心は中学生ぐらいの時にジムに来て、高1でデビューして、今もまだ23(歳)ですから、プロで実質8年ぐらいずっと走り続けてきた。そして、また新たな境地、ボクシングに行く、ということで、またさらに走り続けるという。そんな彼のチャレンジする、挑戦する気持ちが僕は好きですから。なので、最後はめちゃくちゃ輝いて、かっこいい姿を見せてほしいな、と思います。

天心選手、もちろんボクシングでも成功する逸材だ、と。

伊藤 そうじゃなきゃ駄目ですよね。そうでないと行かせないです。すぐには無理でも、いずれ井上尚弥選手のようにラスベガスとかでも試合をしてもらいたいですし、それをお客さんとして見たいですね。絶対にトップとってくれってことですよ。

そして、いよいよ世紀の一戦が待ってます。日本の格闘技界でかつてこれだけ待ち望まれたカードはなかったと思います。代表としては武尊戦の実現まで、長かったですか。

伊藤 長かったですよね。もともと、天心が5年前にやろうと発言してからいろいろあり、なかなか実現しなかった。これはもう、天心が(立場を)逆転するしかないと考えましたね。その道を天心がダッシュのように走ったからこそこのようになったと思います。ファンの皆さまには、お待たせしました、という気持ちですね。でもまさか引退時期を延長させるとは考えていませんでしたからね。(笑)

伊藤代表としては、当然勝つ自信もある、と。

伊藤 もちろん。勝たせるようにしないといけないですし、天心が必ず勝つ。そういう方向で動いています。あとは世紀の一戦ですから盛り上げていかないとなりませんね。神聖なる試合にしたい。

分かりました。それでは最後にファンにメッセージをお願いします。

伊藤 近い将来はボクシングのWBSS(World boxing super series)のようなリアルな世界最強トーナメントを開催したいですね! 大体の構想はできています。今現在、世界の格闘技の上位概念は、やっぱりUFC(Ultimate Fighting Championship)だと思うんですよ。ただわれわれがGLORYとの提携によって世界ナンバーワンの立ち位置を変えたいくらいに思っています。そのくらいの大きな志を持ってやらないと面白くないでしょう! そのような構想を持ってGLORYと共にやっていきたいと思っているので、楽しみにしていてください。

 

 

伊藤 隆(いとう・たかし) 職業:RISEクリエーション代表。RISEプロデューサー。
初代WMAF世界スーパーウェルター級王者。「RISE」の名称は「Real Impact Sports Entertainment」の略。RISEは、パンチ、キック、ヒザ蹴りのみの攻撃が有効な立技格闘技。「スピーディ・アグレッシブをコンセプトに強者を集め、最強を決める!ライブ感を重視してお客様も熱狂。まさに誰もが興奮出来るリアルファイティングエンターティメント!」。
公式サイト:https://rise-rc.com/

 

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▶︎「GLORY」のエグゼクティブ・バイス・チェアマン、スコット・ラッドマン氏にもお話をお聞きしました。

Q「GLORYとRISEの提携が格闘技業界でトピックになっています」
 格闘技界は長い間、お互い、冷戦状態にありました。それぞれの団体がそれぞれのファイターと独占契約を結んで、選手の行き来はほとんどありませんでした。すべての団体がその事実に対し不満に思ってはいました。なので、今回のRISEとの提携は必然だったと言えます。
 チャンピオンのペットパノムルンがRISEで戦う機会がありました。そのことをみんながクールだと思ったんです。GLORYのチャンピオンがRISEで戦ったのですから。
 この試合がきっっけで、私たちは話を広げることができました。より多くのマッチアップを考えるようになりました。ファンも望んでいて、私たちも望んでいることです。
Q「最大のメリットは何ですか?」
 GLORYは、コロナ以降、20大会の予定が4大会しかできませでした。RISEと提携することで、我々の選手がより多くの試合を行うことができるようになります。お互いの選手にもっと試合をさせることができます。コロナ禍でも試合を継続的に行っていくことができる。それが最大のメリットになると思います。
Q「RISEとのコラボレーションに期待していることは」 
 GLORYは、常にエキサイティングな試合を届けるために努力しています。RISEとのコラボレーションはそのためのものです。よりエキサイティングな試合や、これまでになかったようなマッチアップができます。これからは、ヨーロッパやその他の国で人気のあるファイターを、日本に連れてくることも可能です。両団体、お互いに成長して世界的な人気を得たいと思っています。
 GRORYが日本に戻ってくることは、とてもエキサイティングなことです。もちろん、体重や階級は若干異なりますが、今後は、下位の階級でのスカウトも行っています。
 今、軽量級で戦える新しいファイターを探しています。1階級上がれば、さらに多くのクロスオーバーが可能になります。我々はより軽いファイターを探し、RISEとどんどんマッチアップしていくことを約束します。
Q「日本のファンにメッセージをお願いします」
 とても興奮しています。私自身、日本に行くのは何年ぶりだろう(笑)
 もし特定の試合に興味があれば、ツイッターやインスタグラムで教えてください。みなさんの意見も聞きたいのです。それがRISEとの提携するうえでクールな部分だと思います。

(2022年2月12日号掲載)

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〈インタビュアー〉
高橋克明(たかはし・よしあき)
専門学校講師の職を捨て、27歳単身あてもなくニューヨークへ。ビザとパスポートの違いも分からず、幼少期の「NYでジャーナリスト」の夢だけを胸に渡米。現在はニューヨークをベースに発刊する週刊邦字紙「NEW YORK ビズ」発行人兼インタビュアーとして、過去ハリウッドスター、スポーツ選手、俳優、アイドル、政治家など、1000人を超える著名人にインタビュー。人気インタビューコーナー「ガチ!」(nybiz.nyc/gachi)担当。日本最大のメルマガポータルサイト「まぐまぐ!」で「NEW YORK摩天楼便り」絶賛連載中。

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