桂由美(2)

0

日本の伝統を現代に生かしていきたい。それが私のライフワーク

「ガチ!」BOUT. 189

日本のブライダルデザイン業界の第一人者、桂由美さんが10月、ニューヨークの日本ギャラリーで自身のコレクション「YUZEN TODAY」(後援・在ニューヨーク日本国総領事館)を開催した。オープニングレセプション出席のため、ニューヨークを訪れた桂さんにお話を伺った。
(聞き手・高橋克明)

友禅シルクのドレスNYで初披露が好評

今回初のニューヨークでのファッションショーですが、初めて、というのが意外な気もします。

桂 パリではすでに4回やってますけども、ニューヨークで(の単独)は初めてなので反応がどうかなぁって思うんですけれど、やはり日本の方と同じくらいアメリカ人のお客さんに来ていただきたいですね。アメリカに住んでいる日本の方にとって、日本を代表する服装はやはり、着物だとは思うんですが、着物はなかなか帯も結べない方も多いし、重いということもあって日常にはちょっと(適してない)かなって。(なので)こういった服でぜひ、日本人としての誇りを持っていろんな場所に出て、日本の紹介をしてほしいなぁと。

今回の先生の作品は全て、日本独自の素材を使っているんですよね。

桂 そうですね。日本の友禅という非常にアーティスティックな芸術性の高い物で作っているわけですから、それをもっと着やすくしたわけですし、それから、これインクジェット(・プリント)という方法なんですけれど、それによってもっと安くできて、素材は全て日本のシルクを使っていますからね。特にこれは来年1月にパリコレに出展するものなんですけれど、今回、先にニューヨークに持ってきました。

作品群の中でも一番目立ってます。(笑)

桂 でしょ(笑)。これ、世界初なんですけれど、金箔(きんぱく)の光の他に反射剤を使ってるんですね。普通は金箔ってこんなに光らないんです。ライトの反射でここまで光るんですね。実は来年、日本が尾形光琳の琳派400周年なので、パリコレのテーマも琳派でいこうと思ってるんですね。

1115-gachi-DSC09986

友禅シルクを使ったドレスの特別コレクションの1点=10月14日

この日本独自の繊細さはなかなかアメリカ人には伝わらないのかなと偏見を持ってしまうのですが。(笑)

桂 でも、実際にいらっしゃる方は「スゴいね」っておっしゃっていただきますから(笑)。ここはね。(アメリカはアメリカでも)ニューヨークですから。(笑)

こちらが今回、一番注目されていた作品ですが。

桂 もう一つのこれは、世界一軽いシルクで作られているんです。

前回のインタビュー(2013年1月1日号掲載)でおっしゃっていた物ですね。

桂 そう。私が世界一軽いシルクで織ってみてとお願いして。先日、この生地を作られた方が内閣総理大臣賞を受賞されましたけど、これ全部で600グラムしかないんですよ。セミの羽みたいでしょ。

先生の今後の目標を教えてください。

桂 もちろん、今後もウエディングファッションをよりエレガントに美しい物にしていくのは当然なんですけれど、その他に日本の伝統を現代に生かすという役割を担っているので、これはもう私のライフワークとして頑張っていきたいですね。オートクチュール的な存在は私を除いてもう他にはいないですから。頑張んなきゃね。(笑)

1115-gachi-DSC09980

会場に展示されたウエディングドレス=10月14日

1115-gachi-DSC00149

ファッションショーの模様=10月14日

1115-gachi-S_DSC09994

日本独自の伝統美・友禅の美しさを近代のドレスに取り入れた桂由美さんの作品に魅入るニューヨーカーら=10月14日

 

★インタビューの舞台裏 → ameblo.jp/matenrounikki/entry-11942393541.html 

 

1115-gachi-S_DSC09996

日本独自の伝統美・友禅の美しさを近代のドレスに取り入れた桂由美さんの作品に魅入るニューヨーカーら=10月14日

桂由美(かつら・ゆみ) 職業:ブライダルファッションデザイナー
東京生まれ。共立女子大卒業後、パリへ留学。帰国後、1964年に日本初のブライダル総合専門店をオープン。翌年、日本初のブライダルコレクションショーを開催、以降毎年開催している。93年、ローマ法王に、博多織の祭服を献上。99年、東洋人で初の東洋人デザイナーとして初めてイタリアファッション協会会員となり、ローマオートクチュールコレクションに参加。2003年、春夏パリオートクチュールコレクションに参加。以降毎年パリでコレクションを発表している。06年、Newsweek誌『世界が認めた日本人女性100人』の一人に、皇太子妃雅子さまはじめ、緒方貞子さん、黒柳徹子さんらとともに選出される。現在も、オートクチュールコレクションに参加する唯一の日本人デザイナーとして、日本大使館後援の下、京都の伝統工芸とトレンドのコラボレーションをした作品を発表し、各国マスコミより称賛を浴びている。公式サイト:www.katsura-yumi.co.jp/、公式ブログ:ameblo.jp/yumi-katsura/
◇ ◇ ◇
桂由美さんは他にも以下の役職も務めている
株式会社ユミカツラインターナショナル 社長、株式会社桂由美ウエディングシステム 社長、NPO法人 全日本ブライダル協会 会長、アジアブライダル協会連合会 会長、全米ブライダルコンサルタント協会 名誉会員、イタリアファッション協会 正会員、共立女子中学高等学校同窓会 会長、NPO法人日本ネイリスト協会 理事、NPO法人地域活性化支援センター 理事、千葉商科大学サービス創造学部 特命教授、公益法人 日本生涯学習協議会 会長、アジア・クチュール協会 創立メンバー

◇ ◇ ◇

ピアニストで作曲家の妹尾美里さん
「日本の曲をアレンジ」したメロディーで花を添える

1115-gachi-M_DSC09925

桂由美さんデザインのドレスを着た妹尾美里さん。左も桂さんの友禅シルクを使ったドレスの特別コレクションの1点=同

桂由美さんのコレクション展覧会「YUZEN TODAY」の会場で、作品と見事に融合されたメロディーを奏でたのはピアニストで作曲家の妹尾美里さん。
神戸市出身の妹尾さんは、普段、東京を拠点にオリジナル曲で演奏活動をしている。今回の演奏にあたっては、このイベントを企画したプロデューサーが妹尾さんの演奏を聴いて「イメージがぴったりきた」とのことで声が掛かったという。
桂由美さんの作品を世界にアピールする展覧会とあって「日本の曲をアレンジ」してみたと妹尾さん。
ニューヨークはまだ2回目だというが、刺激が強い街との印象を持つ。天才ジャズピアニストと言われたフランス出身のミシェル・ペトルチアーニの音楽に触れたのをきっかけに、クラシックからジャズに転向した妹尾さんは、この機会にジャズクラブをいろいろ回ってみたいと語った。

 

〈インタビュアー〉
高橋克明(たかはし・よしあき)
専門学校講師の職を捨て、27歳単身あてもなくニューヨークへ。ビザとパスポートの違いも分からず、幼少期の「NYでジャーナリスト」の夢だけを胸に渡米。現在はニューヨークをベースに発刊する週刊邦字紙「NEW YORK ビズ」発行人兼インタビュアーとして、過去ハリウッドスター、スポーツ選手、俳優、アイドル、政治家など、400人を超える著名人にインタビュー。人気インタビューコーナー「ガチ!」(nybiz.nyc/gachi)担当。日本最大のメルマガポータルサイト「まぐまぐ!」で「NEW YORK摩天楼便り」絶賛連載中。

 

(2014年11月15日号掲載)

Share.