時に滑稽で、時に哀しい男の哀切感を魅せる「カラオケマン」
「ガチ!」BOUT.7
舞台、映画、テレビと、オールラウンドで活躍、日本を代表する名俳優である風間杜夫さん。ひとり芝居「カラオケマン」のアメリカツアーを直前に控えた6月23日、サンフランシスコに滞在する風間さんに話を伺った。(聞き手・高橋克明)
アメリカ公演を直前に控えて、今の心境は?
風間 これまでスペイン、中国、韓国と字幕スーパーでやってきたんですが、どれだけ日本語の分からないアメリカの方たちが劇場に来てくれるのか。サンフランシスコやニューヨークで暮らしていらっしゃる日本人の方にもたくさん見て欲しいですね。今までの経験からいきますと、日本と変わらない反響があって、皆さんに喜んで見て頂けるなと思っております。
初演はスペイン。その後も中国、韓国と海外でも高い評価を得てきた「カラオケマン」ですが、日本のカルチャーイメージが強いサラリーマンという題材が、世界で受けていることについては?
風間 (主人公は)立派なサラリーマンじゃないんです。日本人サラリーマンのイメージといいますと、外国の方にとってエコノミックアニマルといいますか。日常抱えている色んな問題と自分の仕事で奮闘している姿が時に哀愁を帯びているというか、滑稽であるというか。主人公は団塊の世代なんですけどね。いずれ、リタイアするけれども、それは免れない。ニューヨークでも流行っていると思いますが、「カラオケ」を武器にして営業で頑張っている姿なんです。男の哀切感といいますか。切実に踏ん張っている姿がどこの国の人にも通じる。それが心に届いているんでは、と思うんですが。
どういった部分に注目してもらいたい?
風間 1時間10分くらいの短い芝居なんですが、その中で描かれている男の生き様といいますか。(芝居の中で)立ち止まって自分の人生を振り返るっていうところがあるんですが、これは日本でも外国でも同じだと思うんですね。人生、ある年齢で、一度立ち止まって自分の人生を振り返る。そういう一面はどなたにも通じるのではと。そこが届いてくれたらいいなと思います。
アメリカ公演のために変更した部分は?
風間 僕自身が歌う歌は英語の歌に変えていません。接待している社長が歌っている曲が「カントリーロード」。今まで中国や韓国、スペインの時は、中国語、韓国語、スペイン語をの曲を披露していたんですが、アメリカで英語の歌を歌ってもびっくりされないだろうと思って(笑)。演歌で押し切ろうと。
今年の3月には落語「独演会」でニューヨークを訪問。良い刺激になりましたか?
風間 落語を日本人会のみなさんに聞いて頂いて、皆さん喜んでくれたんで。今回は900人っていう大きな劇場なんでね。たくさんの人に見て頂きたいと思っております。
読者の方に一言。
風間 とにかく劇場に来て頂いて。損はさせない、必ず喜んで頂けるお芝居になっているので。自信をもって舞台に立ちたいんで、是非、楽しみに来て下さい。
風間杜夫(かざま・もりお)職業:俳優
1949年東京生まれ。3歳から児童劇団に所属し、東映映画などで子役として活動。早稲田大学を経て、77年からつかこうへい作品の主軸俳優として活躍する。映画「蒲田行進曲」(82)、 「陽暉楼」(83)で日本アカデミー賞最優秀助演男優賞を二年連続で獲得。テレビドラマ「スチュワーデス物語」(83)、「銭形平次」(87)、「古畑任三朗」(96)、「人間の証明」(2004)など幅広く活躍。舞台ではヨーロッパとアジアで大成功を収めた「カラオケマン」を含む一人芝居三部作で、文化庁芸術祭大賞、第11回読売演劇大賞最優秀男優賞、第3回バッカーズ・ファンデーション演劇奨励賞を受賞(03)。
■舞台「カラオケマン」
一人の中年男。彼はごく平均的なサラリーマン。家庭も程々に円満。妻と二人の子供がいて、5年前に郊外にマンションを買い、車も一台持っている。しかし、 当然悩みも人並みに抱えている。仕事、家庭、そして異性問題。そんな彼をいつも救ってくれたのがカラオケだった。ある日、仲人を頼まれた。嫌がる妻を何とか説得して、式に臨む。ところが急転直下事態は思わぬ方向に。作・演出:水谷龍二【日程】6/28(木)、29(金)【会場】BMCC Tribeca Performing Arts Center【ウェブ】www.ipsnewyork.com
〈インタビュアー〉
高橋克明(たかはし・よしあき)
専門学校講師の職を捨て、27歳単身あてもなくニューヨークへ。ビザとパスポートの違いも分からず、幼少期の「NYでジャーナリスト」の夢だけを胸に渡米。現在はニューヨークをベースに発刊する週刊邦字紙「NEW YORK ビズ」発行人兼インタビュアーとして、過去ハリウッドスター、スポーツ選手、俳優、アイドル、政治家など、400人を超える著名人にインタビュー。人気インタビューコーナー「ガチ!」(nybiz.nyc/gachi)担当。日本最大のメルマガポータルサイト「まぐまぐ!」で「NEW YORK摩天楼便り」絶賛連載中。