【独占インタビュー】井上ケイ/Zeebra

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KEIさん

KEIさん

ヒップホップ・アクティビスト Zeebra

Zeebra

BOUT. 320

「チカーノになった日本人」 井上ケイ/ヒップホップ・アクティビスト Zeebraに聞く

ゴールはいじめてる子たちを再教育する施設を作りたい(KEI)
子供たちにメッセージを伝えることが、かつて人生を変えてくれたアーティストたちへの恩返し(Zeebra)

いじめ撲滅チャリティーソング「No Bully」制作

日本を代表するヒップホップ・アクティビストのZeebra(ジブラ)ら日本のトップを走るラッパー12人が集まり、いじめ撲滅チャリティーソング「No Bully」を今春、発売、チャリティーイベントも予定している。どういう思いでこのプロジェクトを作り、参画したのか。Zeebraと、プロジェクトを立ち上げた「一般社団法人Homie子ども未来育成会」代表理事の井上ケイ氏に話を聞いた。 (聞き手・高橋克明)

KEIさんに初めてお会いしたのが今から15年前。それ以前から一貫して日本の子供たちのための活動をされています。今回の活動もその延長線ですね。

KEI ずっと面倒を見ていた中学生の子が、いじめで自らの命を落としてしまい…自分もうちの女房もやっぱり相当、落ち込みました。一緒に遊んでいたうちの息子も、かなり精神的にダメージを受けたんですよね。やっぱり、自殺まで追い詰められる状況を、その手前でなんとかしてやりたい。いじめの形態もどんどんエスカレートしてきてるんですよ。昔だったら高校生がやるようないじめを、今は小学校4年生、5年生がやるようになってきたんです。ひどいところになると生徒+担任まで加わっちゃっていじめてるケースもあって、このままだと歯止めが効かないなって。

そこで、立ち上がらないと、と思ったわけですね。

KEI いじめがあるって話を聞くと、新潟だろうが、福島だろうが、電話もらった時点で車でその学校まで行ってます。行って、校長なり教頭なりと話すんですが、(彼らは)いじめがあるとは絶対に認めないんですよ。いじめる子にしても、今はLINEなり、ネットなりでいじめをする。止めようがない。加害者も被害者も集めて話し合いをしたところで、その場では解決しても、また違う子を探していじめる。

追いかけっこですね。

KEI 本当にいじめのない世界を作るには、元から断たないとダメだなって。なので、いじめっ子たちの多くが、崇拝しているラッパーとかに「なんだよおまえ、まだそんなカッコ悪いことしてんのか?」ってリリックに乗せて歌ってもらうと、一部の子でも「いじめ、もうやめよう!」と思ってくれるんじゃないかなって。いくら学校の先生が、校長先生が、教育委員会が言おうが、そういう子供って聞く耳持たないから、そういう子たちが崇拝してるアーティストたちが歌うことによって、スッて頭に入ってくると思うんですよね。

確かに! Zeebraさんも、その活動に共感されたわけですね。

Zeebra そうですね、自分も小学生の時はナイーブで、いじめられた経験もありますし、逆に中学くらいになったら、ちょっと強くなった気になって、今思うと、弱い子に対して力を誇示するようなことをしたこともあったかもしれないんですよね。ただその時も、あんまりいい気はしなかったなぁって。子供の頃って、将来何になりたいか、どうやって生きたらいいか、よく分かんないじゃないですか。そんなまだ何も分かってない時期に、世界の終わり、みたいなことを経験してしまうと、本当にそれだけで命を絶っちゃうことになりかねない。だったら、腕っぷしの強い子たちは、ヒップホップファンが結構多いので、彼らに向けて、なにかわれわれができることがないかなと。

アーティストたちの言葉って、彼らにこそ刺さりますよね。

Zeebra 僕がそうだったので。自分より上の世代のアーティストたちの歌詞を聞いて、人生を真面目に生きていくことをやっと覚えたんだと思います。それまでと180度違う人間にさせてもらえたんですね。僕も10代だった頃は、何か悪いことをする時に流す、かっこいいBGMみたいなぐらいのつもりで聴いてたんですよ。「クリミナルマインド」っていうアルバムを出したKRS-Oneってアーティストがいて。グループのDJであったスコット・ラ・ロックが殺されてしまった後、その次に「ストップ・ザ・バイオレンス」ってアルバムを出したんですね。やっぱり感銘を受けて、それこそが本当に必要とされてるメッセージだなって、当時、思いました。

同じような作用が、今回のアルバムを聴いた若い世代にも出てきますね。

KEI 腕っぷしが強いリーダー格みたいな子が、正義感を感じてくれるだけでもずいぶん変わりますよね。そういう子がちょっと中途半端な連中に「おまえ、そんなことするんじゃねえよ」ってクラスの中で言ってくれたらまた絶対違うと思う。そういう子を少しでも増やしていけたらなと。「いじめをしちゃダメだよ」ではなくて、「いじめしてるおまえは、ダサいんだよ」っていうのが一番効く言葉ですよね。そうすると全体的に空気がガラッと変わっていくんじゃないかなっていう期待はあります。

Zeebra このキャリアで感じるのは、こうやって活動している今でも、もう本当にいじめみたいな感覚では(アーティスト活動も)何も先に進まないんですね。われわれはある意味、脛(すね)とかいろんなとこに傷がついてるヒーローなのかもしれませんけど、何か意味を持って、責任感を持って、やっていける奴(やつ)をどんどん増やしていけるヒーローになりたいなと思いますね。

具体的に、今回のプロジェクトに至った経緯はお二人の出会いからですか。

KEI 一緒にごはんを食べる機会があって、自分はその時点で「音楽でいじめを撲滅したい」とお願いしようと思ってました。でも(プロの)Zeebraさんに、お金がないとできないよ、と言われたら、また別の方法を考えようと思ってたんですけど、すんなり快諾してくださって今に至ります。それにしても、これだけの人数を集めて、並大抵のことじゃできないと思うんですよね。Zeebraさんには感謝しかないですね。

Zeebra 自分、今までも何度かそういったチャリティーみたいなことやらせていただいてたんですよ。当時ハイチで大きな地震があったときも、ちょうど時代的にツイッターが始まった時だったんですね。それでミュージシャンとか、業界の人が(SNSを通じて)バーって集まってきてくれて。ちょっと俺らみんなでチャリティーソングを作りましょうよって始めたら、一気に膨れ上がってね。当時、元自民党衆院議員の、あのハマコー(故・浜田幸一氏)さんが「君たちいいことやってるね」って、国会で話題に上げてくれて、国としてもサポートしますって言っていただいた思い出もあります。

当時はツイッター(現・X)も、そんな役に立つ使い方があったんですね。

Zeebra まだいい時代でした。実際、最終的にはハイチに学校まで作れたので。アーティストたちが集まって何かをすることで、世の中のためになる、のは、子供の頃からの夢だったので、音楽でできることは何でもしたい。KEIさんもそうですけど、みんなそれぞれの立場で、それまでの過ちや、本来こうあるべき自分を取り戻して、道をやり直すことが大切だと思うんですよ。お会いする前から、KEIさんやホーミーたちから、家族愛や人間愛を教わった。一度、お会いしたいなと思ってました。

プロジェクトの最終目標は具体的に何でしょう。

KEI 今回作ったPVを全国の学校の朝礼とかに流してもらえるようになったら最高ですね。校長や教頭の話なんて誰も聞いてないですよ。そんなの聞くよりも、このPVを流して、子供たちに聴かせた方が、全然みんな真剣に聴いて、真剣に物事を考えてくれると思うんですね。最初は神奈川から東京へ含めて、全国、毎週月曜日の朝礼は、この音楽を聴いてもらえるようにしたい。

Zeebra あとこの楽曲が世に出てムーブメントがぐわっと広がると、それに賛同するアーティストがまたそういった曲を作ってくれるパターンもあると思うんです。理想を言えば、それらの曲がプレイリストなり、1枚のアルバムになったりすれば、またそこで新たな可能性につながる。昔、少年院に慰問とかに行ったこともあるんですけれど、そういった意味のあることにつながってくれると思います。それこそが、かつて人生を変えてくれたアーティストたちへの恩返しにもつながると思うんですよね。

KEIさんもZeebraさんも、もう何年も前からそういったボランティア活動をされています。どういった世の中にしていきたいですか。

KEI 今はもう、自分の最終ゴールっていうのは、いじめてる子たちを再教育する施設を作りたいですね。学校だと、いじめるグループに加わらないと、自分がいじめられてしまうって空気があるんですよ。そんな奴についていかなくて、いじめられてる子を助けろよって、そっちの方がかっこいいよっていうのを教える施設みたいなものが必要だと思うんですね。

Zeebra 子供たちには、この世界は誰のためでもなく、自分のためにあるんだよと伝えたいですね。自分の道をどんどん行くべきだよ、と。とにかく子供たちには希望を持ってほしい。何にだってなれるじゃないかと。(いじめられてる子には)われわれみたいな奴がいるんですよ。必ずいるんですよ。絶対いるんで、もう心配しないで、自分の人生に希望を持って生きてほしいなって思います。なんていうかな、そんなに腐ってないですよ、世の中。絶対どこかには、手助けしてくれる人、手を差し伸べてくれる奴がいる。子供のうちは行動範囲も狭いし、なかなかそういう人に出会えないかもしれないけれど、でも、その存在だけはいるっていうことを理解してほしいなと。

井上ケイ(HOMIE KEI)
1961年東京で生まれ20代まで育つ。ヤクザ時代FBI囮捜査で捕まりアメリカの刑務所・拘置所合わせて10年以上服役。そこで、メキシコ系アメリカ人「チカーノ」と出会い人生を大きく変える。出所帰国後は、米刑務所内での経験や勉強を生かし、ボランティア団体を設立、壮絶な人生経験を活かすために非行少年少女、いじめ問題、児童虐待、様々な環境で苦しむ人たちのサポート活動、その他にもファッション(チカーノ・ファッション)、書籍、映画、メディア、飲食と多方面で活動。これまで『KEI チカーノになった日本人』『アメリカ極悪刑務所を生き抜いた日本人』(いずれも東京キララ社)が出版され、別冊ヤングチャンピオンにて『チカーノKEI』の原作者として連載を続け、単行本も発売する。 公式サイト:https://homiekei.com

Zeebra(ジブラ)
職業:ヒップホップ・アクティビスト
東京都出身。キングギドラのフロントマンとして1995年にデビューする。日本語ラップの礎を築いたグループとして高い評価を得つつも、翌年にグループは活動を休止。1997年にシングル「真っ昼間」をリリースし、ソロアーティストとしてメジャーデビューを果たす。日本のヒップホップシーンの顔役として活躍し、2014年に自身のレーベル「GRAND MASTER」を設立。15年にはZeebraがオーガナイズとメインMCを務めるMCバトル番組「フリースタイルダンジョン」がテレビ朝日で放送開始。17年、ヒップホップ専門ラジオ局「WREP」をインターネットラジオとして開局した。東京都渋谷区の「渋谷区観光大使ナイトアンバサダー」を務めるなど、その活動は多岐にわたる。
公式サイト:zeebra.amebaownd.com

〈インタビュアー〉
高橋克明(たかはし・よしあき)
専門学校講師の職を捨て、27歳単身あてもなくニューヨークへ。ビザとパスポートの違いも分からず、幼少期の「NYでジャーナリスト」の夢だけを胸に渡米。現在はニューヨークをベースに発刊する週刊邦字紙「ニューヨーク Biz!」発行人兼インタビュアーとして、過去ハリウッドスター、スポーツ選手、俳優、アイドル、政治家など、1000人を超える著名人にインタビュー。人気インタビューコーナー「ガチ!」(nybiz.nyc/gachi)担当。日本最大のメルマガポータルサイト「まぐまぐ!」で「NEW YORK摩天楼便り」絶賛連載中。

(2024年4月20日号掲載)

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