久下香織子キャスター

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一番求められている情報を伝えていきたい

「ガチ!」BOUT. 176

 

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FCI(Fujisankei Communica-tions International, Inc.)では、米国および欧州に住む約60万人の日本人を対象に、日本語によるニュース情報番組を毎日放送している。2007年から放送してきた「FCIモーニングEYE」が、今月4日から、「FCI News Catch!」として生まれ変わった。新たな試みとして、米国のニュースや生活情報を取り上げる久下香織子キャスターの新コーナー「Weekly Catch!」(毎週木曜日)も始まった。そこで、新番組と新コーナーについて久下キャスターに話を伺った。 (聞き手・高橋克明)

 

「News Catch!」スタート 

新番組「FCI News Catch!」がいよいよ今週から始まりましたが、久下さんにとっても久しぶりの番組改編ということになります。

久下 そうなんですね。7年ぶりかと思います。時代が流れていくにつれて、観ていただいている方のニーズもどんどん変わっていきますから、今回は、皆さまのニーズにさらに答えるために大きく改編するので、ぜひ、観ていただければと思います。

朝の番組を担当して、今年でもう17年目になるとのことですが。

久下 (19)98年の4月ですから、そうなっちゃいますね。(笑)

もう完全に「ニューヨークの朝の顔」ですよね。マンハッタンを歩いていると、よく話しかけられたりしませんか。

久下 そうでもないですけど…。でも、たまに「毎朝観てますー」なんて言っていただけると、とってもうれしいです。

あ。いいんですか。それ書いちゃったら、皆さん話しかけますけど。

久下 いいです、大丈夫です。すごくうれしいので。(にっこり)

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今回の改編に伴って、久下さんが担当される「Weekly Catch!」というコーナーも始まりました。

久下 そうなんです。もう私が今までスゴくやりたかったコーナーを実現してもらった形なんですけれども、まずこの1週間に起きたニュースをお伝えして、その後で私が気になった、特にアメリカに暮らす日本人が絶対これは知っておくべきニュースを何本かピックアップしてお伝えします。ニュースって、こう、なんとなく大枠は理解できても、どうしてアメリカではこのニュースでこんなに騒動になっているんだろう、ここまで大きくなっているんだろうとか、疑問に思うことがありますよね。

多々あります。(笑)

久下 私自身、ニュースを伝えながら「えっ、なんでこうなっちゃうの? どうしてこういう判決になるの?」って疑問に思うこともあって、それはアメリカ文化の常識がその背景にあるわけで、後でアメリカ人から聞いたり、アメリカのニュースを見たり、いろいろと情報を集めると「なるほど、こういう背景だったんだ。こういう事件が過去にも何度かあった(ことが影響している)んだ」と納得できるんです。

なるほど。

久下 アメリカでは逆に当たり前過ぎて伝えない、日本人では分かり得ないその背景、裏側を解説しながら、分かりやすく皆さまに伝えていければと思ってるんですね。

面白そうです。僕たちが観ても分かりやすく、面白いっていうことですよね。

久下 私たちが観るから面白いと思うんです。(ニュースを読みながら)ここの部分を伝えたいなぁ、ここに補足情報を入れたいなぁとずーっと思ってきたところを、今回、私が企画を書いて、スタッフともスゴく話し合って、それが実現したので、思いっきり伝えていきたいと思ってます。

他にもロケが増えるとか。

久下 そうですね、コーナーの後半の部分では、ちょっと外に飛び出したいと思っていて。それは、逆にアメリカのニュースでは報道されてなくても、アメリカに暮らす日本人にはスゴく大きな出来事が起きていたりする。それをアメリカで暮らす日本人の目で伝えていきたいと思ってるんですね。例えば、先日、2日かけて取材してきたんですけれど、ブルックリンにドレッシングを作っている夫婦がいて。彼らは、若くて、エネルギッシュで、もーう、最高で。まだまだ、こんなに目をキラキラさせて、日本からアメリカンドリームを追い求めてきた若い世代がいるんだってことがスゴくうれしかったんですね。

1回目にふさわしい取材対象で。

久下 ドンピシャでした。もちろん、毎回ジャンルは問わずに、料理であったり、医療であったり、とにかくこんな感じで、アメリカに暮らしていく中で絶対に必要な情報や、こちらで暮らす日本人の元気を自身で取材して、日系人向けに、伝えていきたいなって思います。

久下さんがニュースを伝えている時に一番大切にされていることは何ですか。

久下 そうですね。やっぱりジャーナリストとしての立場は守りたいと思うんですね。解説をする上でもフェアでいたい。ヘンな角度を入れずになるべくフェアな立場で背景を伝えていきたいと思っています。個人的な意見を言う場所ではないですから、視聴者の皆さんが「なるほど。私はこう思う」って自分の意見が出てくるような土壌が出来ればなと思っています。そこは常に気を付けている点ですね。

16年間ニュースを伝えてきた中で、最も印象に残ったニュースは何だったでしょう。

久下 やはり、“9・11”ですかね。

2001年の米同時多発テロ。

久下 そうですね。あの日は忘れられないですね。あの朝、いつものように日本語放送で「ごきげんよう」って皆さんにお伝えして、いつものように8時にライブが終わって。で、いつものように朝ご飯を買いにいって(オフィスに)戻ってきて、デスクで食べようと思ったらディレクターから電話が掛かってきたんですね。「ワールドトレードセンターが燃えてる!」って。そこでニュースをつけたら、ちょうど2機目が突っ込んだところだったんですね。

あの事件以降、ニューヨークが、というよりアメリカという国全体が変わったと言われますが、久下さん個人にも大きな変化はありましたか。

久下 みんな変わったんじゃないでしょうか。あの時にニューヨークにいた人はみんな変わったと思うし、世界もやっぱりニューヨークを見る目が変わったと思いますね。個人的にもいろいろと変わりましたけど、まずは、自分が移民である、ということを痛感しましたね。それまで私は(自分のことを)日本人だとすごく思っていて。“いつか日本に帰る日本人”で、自分が移民であるという感覚がなかったんですよ。それがあの事件によって「あぁ、私はこのアメリカという国にいる移民なんだ。少数民族であり、移民なんだ」って思わされました。とっても裕福で幸せな日本という国で生まれ育ったけれど、世界はいろんな対立があって、民族間で憎しみもあり、そうやって生きている民族、国民もいるんだっていうことを身に染みて感じましたね。そこから人としての自分は確実に変わりましたね。これから自分の子供であれ、自分が接する若者であれ、そういう人たちに何を伝えなければいけないか、その1ページ目がその時に書き変わってしまった、と思いました。

なるほど。それでは久下さん個人の今後の目標を教えてください。これからも朝のニュースは続けていただけますか。

久下 私、割としつこいタイプなので(笑)。できる限りはやっていきたいし、求められる限りは続けていきたいです。一つの番組も一つの縁なので、一つの番組をこれだけ長い間やらせていただけるキャスターもそういないと思うので、それは大切にしていきたいですね。

番組情報
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今月4日にスタートした「FCI News Catch!」。日本からの最新ニュースは番組単位で分かりやすく紹介。
新企画では、キャスター久下香織子、阿部知代がアメリカ生活に役立つ情報をお届けするなど、充実した番組内容となっている。
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Weeklycatch
〈毎週木曜日〉
久下香織子キャスターが毎週木曜日に担当する新コーナー。前半はアメリカABCニュースから厳選したトピックを情報を補いながらわかりやすく紹介。後半は、健康、年金、季節の料理レシピなどアメリカ生活に役立つ情報や社会問題までバラエティーに富んだ話題を取り上げる。
【ウェブ】www.fujisankei.com

それでは、最後に視聴者の皆さまにメッセージをお願いします。

久下 先ほどお伝えしたように、このアメリカに暮らす日本人が一番求めている情報を伝えていきたいんですね。なので、視聴者の皆さまからのご意見、ご質問がたくさん欲しいんです。アメリカで暮らしていく中で、ここが分からない、ここが知りたい。もう何でもいいんです。「日本ではこうだったのに、アメリカではどうしてこうなの?」とか。「まだ渡米して1週間だけど、ここが分からないんです」とか。「もう在米20年だけど、これを取り上げてよ!」とか。本当に何でもいいんです。駐在員であれ、学生であれ、経営者であれ、ご意見、ご感想、アドバイス、知りたいこと、疑問、ぜひ、番組宛にお送りいただければと思います。

★ インタビューの舞台裏 → ameblo.jp/matenrounikki/entry-11903525440.html
(写真撮影:鈴木貴浩)

久下香織子(くげ・かおりこ) 職業:キャスター
神奈川県横浜市出身。ニューヨーク在住。1998年からFCI日本語放送のキャスターを努める。現在、めざましテレビのニューヨーク中継などでも活躍中。趣味は太極拳。わんぱく盛りの息子との毎日はブログでも紹介している。
公式ウェブ:www.fujisankei.com/blog-kuge

 

〈インタビュアー〉
高橋克明(たかはし・よしあき)
専門学校講師の職を捨て、27歳単身あてもなくニューヨークへ。ビザとパスポートの違いも分からず、幼少期の「NYでジャーナリスト」の夢だけを胸に渡米。現在はニューヨークをベースに発刊する週刊邦字紙「NEW YORK ビズ」発行人兼インタビュアーとして、過去ハリウッドスター、スポーツ選手、俳優、アイドル、政治家など、400人を超える著名人にインタビュー。人気インタビューコーナー「ガチ!」(nybiz.nyc/gachi)担当。日本最大のメルマガポータルサイト「まぐまぐ!」で「NEW YORK摩天楼便り」絶賛連載中。

 

(2014年8月16日号掲載)

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