長澤まさみ

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大胆な自分を周りの人が求めてくれていたんだなって

「ガチ!」BOUT.124

 

長澤まさみ

 

現在ニューヨークで開催中の「ニューヨーク・アジア映画祭」。同祭で最も注目されるアジア人女優として「モテキ」(2011)の長澤まさみさんがライジング・スター・アワードを受賞した。14日、ニューヨーク上映会のために来米した長澤さんにお話を伺った。(聞き手・高橋克明)

 

映画「モテキ」NY上映会で来米

まずはライジング・スター・アワード受賞おめでとうございます。

長澤 私自身、大好きな作品(での受賞)なのでとてもうれしいです、はい。

「モテキ」は過去の出演作と比べて、結構大胆な演出もあり、今までの清純派のイメージとはまた違った一面を見せられました。

長澤 そうですね。うーん、自分でもそういう清純派のイメージがあったのは分からないわけではなかったんですけれど、それがこんなにも大きなものだったというのは「モテキ」を演(や)った後に一層感じたんですね。(出演依頼を)受けた時は割となんでも「楽しそうだな」ってやっちゃう好奇心旺盛なタイプなので(笑)、特に意気込んで、やってみよう! と思ってこの役に挑んだわけでもなかったんです。でも(結果、今回のような役を)周りの人が求めてくれていたんだな、というのは感じました。今回のような自分を、大胆な自分っていうのかな、期待してくれている人がいたんだなと感じましたね。

女性ファンが急増したり、反響の大きさをご自身はどのように受け止められていますでしょう。

長澤 なんだろ、自分で言うと角が立つかもしれないんですけど、自分が思う、自分が演じてきた役柄の印象って、やっぱりどこかで完璧って思われがちだったと思うんです。CMの印象もそうだけど、清純派イコールすごく優等生で真面目で、なんか、こうきちっとしてて隙がないというか、そういうイメージで作られてたんだなって。その時々に演じた役柄がそうだったから、良くも悪くもそういう自分になっていたんだなって。でも今回だらしないというか、男の人の家にデートの1回目で行くって、ある意味だらしないですから(笑)、そういう隙みたいなのが見えたのが良かったのかなぁって。女性から「なんだー、そういうところもあるんだー」って安心してもらえたのかなって思います。

© 2011 映画「モテキ」製作委員会

© 2011 映画「モテキ」製作委員会

聞くところによると、撮影前の打ち合わせの時に長澤さんの方から監督に「自分に自信がない」と話されたとか。

長澤 (自身演じる)「みゆき」っていう役にリアリティーを持たせたかったんですね。(原作の)ただのふしだらな女の子の設定が、監督にそう相談したことで、より一層深みが出たと思うんです。女の子ならみんな抱えている不安というか、だから共感してもらえたのかなとも思うし。

長澤さんが自信がなかったら、世間の人たちはどう自信を持っていいか。(笑)

長澤 いやいやいや、とんでもないです(笑)。キレイな人なんて、もう、この街で歩いてたらいっぱいいるじゃないですかぁ。

いないです。長澤さんがうらやましがるような人なんて、いないです(真顔で)。本日のプレミア上映、地元のアメリカ人も多く来られます。この作品を通じて、ニューヨーカーに何を感じ取ってもらいたいでしょう。

長澤まさみ長澤 そうですねー、もう、これはお祭り映画なので、みんなで恋しようよっていう作品なので。んー、なんていうのかな、メッセージは特にないんだと思います(笑)。みんないい恋しろよっ! っていうことだけですね(笑)。(主人公の)幸世に共感する男性ってすごく多いと思うんですね。それは過去の自分だったり、今の自分だったり、もしかしたら未来の自分だったりするかもしれないけど、結局、恋をしてること、こういう恋をしたいんだってことですごく共感を得るんだと思うんです。あまりいいお手本にはなりづらい作品ですけど(笑)。恋するテンションに、ただ、ただ、自分のテンションを上げてくれる映画だとは思うので、それは男として、女として、俺は男だった、あたしは女だったって気付かせてくれる、そんな映画だと思います。それをそのまま感じてもらえればいいかな。

チケットも完売だそうです。

長澤 ニューヨークって(自分が)知らないことがあるのが嫌な人たちがたくさんいる街だと思うんですよ。だから、やっぱりお祭りを知らないのが嫌だって人が多かったんじゃないかなって思います。(笑)

ニューヨークはお好きですか。

長澤 はい、好きです! すごく好きです。初めて来たのが19歳の時だったんですけど、友達と家族と一緒に来て、その時に見るもの全てが新しく映って。街も古い建物から新しい建物まで、何かしらあるので楽しい街ですね。

長澤まさみ(ながさわ まさみ) 職業:女優
1987年生まれ。静岡県出身。2000年第5回東宝シンデレラ・オーディションにて史上最年少でグランプリを受賞。同年、映画「クロスファイア」でデビュー。その後、「世界の中心で、愛をさけぶ」(04年)など、数々の映画やドラマでヒロインを務める。最近の主な出演映画は、「岳―ガク―」「コクリコ坂から」(声の出演)「モテキ」「奇跡」(11年)など。11年初舞台となる「クレイジーハニー」に出演。

長澤さんにQ&A

ファンらの質問に答える長澤まさみさん(中央)=14日、ニューヨーク(撮影:池浦)

ファンらの質問に答える長澤まさみさん(中央)=14日、ニューヨーク(撮影:池浦)

14日、ジャパン・ソサエティー(ジャパンカッツ:共催)で行われた「モテキ」のニューヨーク上映会。ライジング・スター・アワードを受賞した長澤さんは、「この映画は観た人を本当にハッピーにしてくれる作品だと思います。たくさんの人に観てもらえるように皆さんもぜひ宣伝してください」と喜びを語った。上映会後は、観客からの質問に答えるなど、ファンとの交流の場を楽しんだ。

未来君とは同志みたいな感じ
好きな女優はK・ダンストさん

Q:森山さんとすばらしい共演をなさっていましたが、実際に共演された感想を教えてください。

長澤 森山さんとは8年前に「世界の中心で、愛をさけぶ」でも共演させていただいて。二つともすごく日本でヒットして、お互い自分たちの人生がちょっと変わっていって。未来君と一緒にお芝居するのは楽しいし、勉強にもなるので、同志みたいな感じですね。ステキな人です。

Q:米国の俳優、女優、映画監督で共演してみたい人は?

長澤 私が一番好きな女優さんはキルスティン・ダンストさんです。

Q:日本の女優は英語力不足で世界のステージに立てないという大きな課題がありますが、その点についてどう思われますか。

長澤 頑張って勉強します。(笑)

Q:ニューヨークでの公開。ニューヨーカーたちと一緒に鑑賞した感想は。

長澤 日本の映画館だと、皆さん恥ずかしいのか、笑うまでに時間がかかるんですけど、(こちらでは)監督が意図するところで毎回笑ってくださっていたので、とてもうれしかったですね。やっぱりニューヨークの人たちに観てもらえて、私自身がうれしいというよりは、監督がこの光景を見たら喜ぶだろうなという感じです。監督もすごく来たがっていて、何で俺を呼ばないんだ、と。「スーツケースに入れてけ」って言われました。(笑)

 

〈インタビュアー〉
高橋克明(たかはし・よしあき)
専門学校講師の職を捨て、27歳単身あてもなくニューヨークへ。ビザとパスポートの違いも分からず、幼少期の「NYでジャーナリスト」の夢だけを胸に渡米。現在はニューヨークをベースに発刊する週刊邦字紙「NEW YORK ビズ」発行人兼インタビュアーとして、過去ハリウッドスター、スポーツ選手、俳優、アイドル、政治家など、400人を超える著名人にインタビュー。人気インタビューコーナー「ガチ!」(nybiz.nyc/gachi)担当。日本最大のメルマガポータルサイト「まぐまぐ!」で「NEW YORK摩天楼便り」絶賛連載中。

 

(2012年7月21日号掲載)

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