被災地の方々に寄り添い続けてほしい
「ガチ!」BOUT.93
5日夜、マンハッタンのライブハウス「ザ・ビター・エンド」で渡辺美里さんと大江千里さんの東日本大震災被災地に向けたチャリティージョイントライブが行われた。その翌日、渡辺さんに電話インタビューを行い、今回のライブ、ニューヨークへの思いを伺った。(聞き手・高橋克明)
NYで震災チャリティーライブ
ジョイントライブを終えられて、今の感想を聞かせてください。
渡辺 あれだけの方に来ていただいて、やってよかったと心から思いました。直接言葉を交わしたわけではないのに、皆さんの思いが痛いほど伝わってきたので。普段、英語で生活されている方たちが、日本語の歌にものすごく共感を抱いてくれていたこともステージの上から感じましたね。
ニューヨークで歌われる「My Revolution」はいかがでしたか。
渡辺 もちろん、ヒット曲というものを皆さんが懐かしく聞いてくださっている、という感覚はあったんですけど「My Revolution」に限らず(大江)千里さんが作ってくれた3曲目に歌った「始まりの詩、あなたへ」という歌は今こそ歌う意味を感じましたね。もしかしたらニューヨークの方は初めて聞く曲かもしれないですけれど、それでも皆さんの熱気を十分に感じ取ることができましたので。
大江千里さんのとのジョイントは久々とお聞きしました。
渡辺 今、千里さんはジャズの方になって、ポップスの世界とはまた違う道を歩まれているんですけど、長い付き合いの友達、というか先輩なのでばっちり、どの曲もお互い合わせることができたのは、やっぱり長年の信頼関係からなんだなって思いました。「あうん」の呼吸ってこういうことなんだなって。(ライブ)前日に到着して当日の昼に打ち合わせしただけだったんですけど、(関係者の方に)「いつも(一緒に演奏)している2人なんですね」って言ってもらえましたから。
前日にこちらに到着されたんですか!
渡辺 飛行機に乗る直前まで他の仕事をしていて、飛行機の中でもホントにやるのかな? って思ってましたから(笑)。でも、千里さんもあたしも音楽漬けの日々なので、だからこそできたんだと思います。
多くの在ニューヨーク邦人が被災地のためにできることを模索しています。美里さんからメッセージをいただけますか。
渡辺 こちらで暮らしていると伝わってくるニュースって断片的で、悪い意味で衝撃的な事ばかりで、伝わってない部分のほうがすごく多いと思うんです。でも、たくさんの人たちの助けがあると、確実に前に進んでいけると思うんです。それと同時にものすごく時間もかかると思うんですね。(被災地の方々が)ほんとに普通の生活ができるようになるのは相当な時間がかかると思うんです。(震災)直後の熱が上がっている状態は、なんとか支援しようって思われている方が多いと思うんですけど、ふとした時に心がパキンと折れてしまわないよう、長い時間をかけて気持ちを一緒に寄り添い続けていってほしいと思いますね。
最後にニューヨークの印象を聞かせてください。
渡辺 生まれて初めて来た海外がニューヨークで、19(歳)の時の「My Revolution」のレコーディングだったんです。(その頃に比べて)どんどんどんどん時代とともに表情が変わっていく街ですけど、何かいろーんな場所に、いろーんな物語が転がってる感じがして、とても好きですね。大好きです。
渡辺美里(わたなべ みさと)
職業:シンガーソングライター
京都府出身。1985年にシングル「I’m free」でデビュー。86年リリースの「My Revolution」が大ヒット、同年女性ソロシンガーとしては初のスタジアム公演となる西武球場コンサートを敢行。以後20年連続で西武球場のステージに立つ。2006年からは「美里祭り」を開催。昨年8月25日には21枚組のアルバムボックス「Misato Watanabe 25th Anniversary Album Box 『Wonderful Moments 25th』」をリリースした。公式サイト:www.misatowatanabe.com
(写真は全て森健次)
〈インタビュアー〉
高橋克明(たかはし・よしあき)
専門学校講師の職を捨て、27歳単身あてもなくニューヨークへ。ビザとパスポートの違いも分からず、幼少期の「NYでジャーナリスト」の夢だけを胸に渡米。現在はニューヨークをベースに発刊する週刊邦字紙「NEW YORK ビズ」発行人兼インタビュアーとして、過去ハリウッドスター、スポーツ選手、俳優、アイドル、政治家など、400人を超える著名人にインタビュー。人気インタビューコーナー「ガチ!」(nybiz.nyc/gachi)担当。日本最大のメルマガポータルサイト「まぐまぐ!」で「NEW YORK摩天楼便り」絶賛連載中。
(2011年4月16日号掲載)