山村美智

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英語の脚本に挑戦、あきらめなければ何でもやっぱり出来る

「ガチ!」BOUT.15

11月初旬、2週間にわたるオフブロードウェイ公演を成功させた女優・山村美智さん。自身が脚本・演出を手掛けた「I and Me & You and I」は2002年日本での初演以来、山村さん自ら出演し、幾度となく上演してきた思い入れのある作品。今回、全編英語で同作をニューヨークで上演するにあたり並々ならぬ奮闘があったという。NY公演を終えた山村さんにお話を伺った。
(聞き手・高橋克明)

 

日本で好演の二人芝居 オフ・ブロードウェイに進出

観る前はコメディタッチな作品かなと気楽に席に座ったのですがそのうち引き込まれるようにぐーっと真剣に観てしまいました。

山村 ラクに観れませんでしたね。(笑)でもそう言って頂くのが一番嬉しいです。観終わった後にこれコメディじゃないね、コメディっていう名前だけど、すごく人生を考えさせられたねって言ってくださる人もいて。家に帰ってから頭の中で繰り返し考えたり、一緒に行った人と話したくなる、そんな作品を創りたいって思ってましたので。

日本で公演した作品を今回NYでやる事になった経緯を教えて下さい。

山村 普通の駐在員の妻暮らしをしてたんですけれども、ある時(台)本を読んでくれた人達が『これ(こっちで)やったほうがいいよ。NYにすごく合うよ』って言ってくれたのがそもそものきっかけでした。でも大きな組織の商業演劇でなくゼロからお金を集めてやる、これくらいの規模の芝居ってすごーく大変なんですよ。まず友人達と集まって英訳して、キャプション書いて、そこからプロダクションに持ち込んだりして。そして今回初めてゴージャスエンターテイメントに持って行ったんです。で、(プロデューサーの)吉井さんがこの作品は絶対やるべきだって言って下さって。

従来の日本語バージョンの台本から英語に書き換える作業はとても大変だったと思うのですが。

山村 日本語だから笑えるギャグってあるわけですよですね。例えばヨウコが『老婆心だけど、ごめんなさい』って言うセリフに対してポタンが『ローバー? ヨウコはロバって言うより七面鳥だな』って返すセリフだったり、英語には直接訳せないような言葉の遊びみたいな部分が随所にあるんです。なかには日本語で演って、英語のサブタイトル入れればいいじゃないかって言う人もいたんですけど。ただ2人芝居のあれだけのセリフの量にサブタイトルつけたらテンポにズレが出てきますよね。かえってアメリカ人に伝わりにくい。その分、手や身体の動きでわかりやすくする事にポイントを置きました。だから苦労はありましたけど今は英語に直して良かったと思ってます。

東京で演られてたときと、今回のNYとお客さんの反応に違いはありましたか。

山村 率直な感想としては日本の方は勿論ですがアメリカ人の方があんなに喜んで頂いたのにびっくりしました。(わかりやすい部分だけでなく)コアな部分までみなさんわかってくれたのに一番驚いたんですよね。英訳して果たしてアメリカ人の方にわかってもらえるか。そこがポイントだった訳ですが、それが深い深い所まで感動してくれた。そこが一番の成果ですね。

舞台の上から観客の表情までわかるものですか。

山村 わかりすぎちゃうくらいわかっちゃうんで私は見ないようにしてるんですね。(笑)特に今回は2人芝居なので集中力が途切れたらそこで芝居が終わっちゃう。でもアメリカ人は(声に出して)『わはははは!』って笑って『ふぇ、ひえぃ』って泣いてくれるのでちゃんと耳には聞こえてくるんですよ。だから舞台の上で安心させてもらえますね。(笑)

劇中、主役の2人の人格が入れ替わります。役者として一番演じがいのある箇所なのでは。

山村 そうですね。振り幅っていうのかな、この作品で一番重要なとこですね。日本の時は私も演出をしてましたから、相手役の子にも出来るだけ普段から自分の一番子供の部分と一番大人の部分を感じながら生活してほしいって言ってました。

その相手役ですが今回は新人の池端えみさん。初舞台にして非常にインパクトのある演技でした。

山村 実は本公演のオーディションでは最終的に、彼女と、ネーティブの方が残ったんです。で最終選考で並んで立った時、絵的にえみちゃんとのコンビネーションの方がいいってプロデューサーに言われまして。結果的にえみちゃんはスゴーック頑張って、この難しい役をこなしてきましたから、私は本当に彼女で良かったと思っています。

この舞台をやられてご自身の人生に何か変化したものはありましたか。

山村 (しばらく熟考して)、今はまだ終わったばかりなのでわからないです。2002年に銀座のみゆき座っていう99席の小さなところからはじめて、このオフブロードウェイまで来たって云うことは本当にスゴイ事をさせて頂いたとは思うんですけど。自分の中でなんか、こう、まだ実感がわかないっていうか…。最終日に(共演の)えみちゃんに『ヨーシ、これから頑張れるね』って言ったんですよ。来週から頑張れるねって、もう終わってるのに。要するに私の意識のなかではまだまだこれからだって思ってるんでしょうね。ただ、もし人生の中で何か残す物があるとしたら(この作品は)残せたのかもしれないなとは思います。

◎インタビューを終えて

観終わった後すぐに席を立てない作品だなと思いました。横に座ったアメリカ人が大笑いしたり声を出して泣いたりで、日本人としてとても嬉しいと感じられる作品でした。山村さんご本人は演じる事についてお話される時、まるで新人女優のようにキラキラ目を輝かせます。この作品の脚本も、脚本を書きたくて書いた訳じゃなく演じるものが欲しくて書いたと言いきります。稽古場で何度も自己が解放される瞬間を感じるという彼女は根っからの役者さんなんだなと感じました。次回作も期待大です。

山村美智(やまむら・みち) 職業:女優、演出家、脚本家

三重県伊勢市生まれ。津田塾大学学芸学部英文学科に在学中より、東京キッドブラザーズに在籍。その後、フジテレビに入社、アナウンサーとして活躍。「オレたちひょうきん族」の初代ひょうきんアナウンサーとして知られる。結婚を機に1984年にフジテレビを退社後、女優として現在に至る。2001年に山村美智子から山村美智に改名。2003年からNY在住。2006年には大河ドラマ「功名が辻」にも出演。

 

〈インタビュアー〉
高橋克明(たかはし・よしあき)
専門学校講師の職を捨て、27歳単身あてもなくニューヨークへ。ビザとパスポートの違いも分からず、幼少期の「NYでジャーナリスト」の夢だけを胸に渡米。現在はニューヨークをベースに発刊する週刊邦字紙「NEW YORK ビズ」発行人兼インタビュアーとして、過去ハリウッドスター、スポーツ選手、俳優、アイドル、政治家など、400人を超える著名人にインタビュー。人気インタビューコーナー「ガチ!」(nybiz.nyc/gachi)担当。日本最大のメルマガポータルサイト「まぐまぐ!」で「NEW YORK摩天楼便り」絶賛連載中。

 

(2007年12月9日号掲載)

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