日本のツーリズム産業発展に寄与、米国法人は創立40周年
日本の「おもてなしの心」大切に、楽しく安心な旅を演出
旅行手配にとどまらない多角的なビジネスサポートも
1905(明治38)年の創業以来、日本初の募集団体旅行である善光寺参拝を実施するなど、日本のツーリズム産業の発展に寄与してきた、株式会社日本旅行。その米国法人として73年にスタートした「日本旅行アメリカ(NIPPON TRAVEL AGEMCY AMERICA, INC.)」が今年、創立40周年の節目を迎えた。旅行業を機軸に、イベントや国際会議、見本市の総合マネジメントなど、さまざまな事業を通じて日米間の懸け橋となってきた同社の今、そしてこれからの展望について、代表取締役社長兼CEOの過足治幸(すぎあしはるゆき)氏に伺った。
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―米国法人の事業について教えてください。
過足社長 弊社の事業は大きく分けて、日本から北米へ旅行や出張をされる方に向けた旅行サービス「インバウンド事業」と、北米から日本へ行かれる方、また北米国内を移動される方向けの旅行サービス「アウトバウンド事業」を機軸にしています。個人のお客さまには驚きと感動のある旅行企画商品を提供し、法人のお客さまにはイベントやビジネスミーティングをはじめ、教育、文化交流など、幅広い領域におけるサポートを行っています。
事業拠点はロサンゼルス本社に加え、ロサンゼルス支店、ニュージャージー支店、サンフランシスコ・ベイ支店、ラスベガス支店を設置。ほか幅広いネットワークを擁し、主要都市のみならず各地域に密着したサービスで、お客さまに「安心の旅」をお届けしています。
―創立から40年間、発展を続けてこられた理由とは。
過足社長 「親切・丁寧・迅速」をモットーに、お客さまの視点に立ったサービスを貫いてきたことには、高い評価をいただいております。「旅行を手配して終わり」ではなく、お客さまが旅行先で全ての行程を楽しまれ、ご帰宅されるまで、責任を持ってサポートさせていただくのが当社の考え。悪天候による交通機関の運休や急なトラブルで、予定していた旅行日程の遂行が難しくなった際には、社員がお客さまに連絡し、夜間や休日でも即座に代替案の提案や変更手配を行います。直近では、米国政府機関のシャットダウン(閉鎖)により国立公園や美術館、博物館などが一時閉鎖されたことが記憶に新しいですね。その際もスタッフが、旅行中のお客さまお一人お一人と連絡をとってご要望を伺い、スピーディーに代替の観光プランを提案させていただきました。結果、お客さまからは喜びのお言葉をいただくことに。どのような状況でも、日本的な「おもてなしの心」を持ち、お客さまに楽しんでいただくことを第一に行動しています。
―競合他社と一線を画す、御社の強みを教えてください。
過足社長 40年間の歴史で築いてきた、米国・日本での強固なネットワークがあるため、「どのような手配も可能」ということが弊社の強みです。例えば法人のお客さま向けに、ビバリーヒルズの高級デパートを全館貸し切った買い物イベントを企画したり、教育機関のお客さま向けにホームステイや学校交流プログラムなどの企画や運営を行ったり…。また、法人様の視察サポートも、当社の得意とする所です。例えば、ある業界の法人様より「アメリカにおける先進的な事例を視察したい」という要望があった場合、お客さまの目的に合わせた視察候補地の調査・選定から、視察に向けた交渉、手配までを全てお引き受けすることが可能です。お客さまと密接したコンサルタント業務を行い、手配代行にとどまらない全面的なビジネスサポートを行っています。
―創立40周年を機に、新たな事業展開はありますでしょうか。
過足社長 新部門「営業開発室」を設け、従来の旅行事業にとどまらない、新たなビジネスモデルの企画や販路拡大に取り組んでいます。現在、力を入れているのは、他業種とのコラボレーションによる新規事業の創出。アメリカは、壮大な自然遺産や、世界中のプロフェッショナルによって生み出されるエンターテインメント、流行の最先端を行くファッションやアートなど、多様な魅力にあふれた国です。だからこそ地域の観光行政や企業など、幅広い業界と密に手を組んで、ともに新たな誘客チャンスの創出を行っていきたいと考えています。
また、今後は社内システムを整備し、日本をはじめ時差がある海外拠点とも迅速・正確な意思疎通を実現することによって、お客さまによりスピーディーなレスポンスができる体制づくりに取り組んで参ります。
―事業を展開する上で、大切にしていることは。
過足社長 時代のニーズに応えてインターネット販売も強化していますが、やはり、私たちが重視するのは「人と人」の心の通ったサービスです。お客さまが旅に出ようと決意されて旅行代理店のカウンターに赴き、さまざまな候補地の提案を受けながら、少しずつ旅のイメージを膨らませていく…そういった機会が少なくなりつつある昨今だからこそ、私たちは、お電話でのやり取りやメールにおいても、きめ細やかな提案を心掛けています。「旅行の計画を誰かと分かち合い、ワクワクする」。その感覚を楽しんでいただけるよう、マニュアル通りではない心のこもったサービスを提供していきたいですね。社員の提案力や、臨機応変に対応できる力を伸ばす教育体制も、さらに充実させていくつもりです。
―最後に、社長の仕事感をお聞かせください。
過足社長 人を信頼し、かつ自身も信頼されるような仕事を心掛けています。私が一社員だった時代、仕事への意欲や情熱が芽生える瞬間は、上司に信頼され、責任を持たせてもらった時でした。人は信頼されると、自分の力以上を出してそれに応えようとします。社長となった今は部下を信じ、また、私自身も部下から頼られる存在になれるよう、日々精進していく所存です。創立40周年を迎えた弊社としても、お客さまに「日本旅行を信頼し、任せて良かった」と感じていただけるようなサービスを提供し続けることで、これからの歴史を築いて参ります。
〈プロフィル〉 過足治幸(すぎあし はるゆき) 神奈川県横浜市出身。早稲田大学フランス文学科を卒業し、1978年に日本旅行入社。ドイツ・フランクフルト支店での駐在経験、東日本海外旅行商品部豪欧課での業務経験を経て、2010年法務室長となる。13年7月、日本旅行アメリカ代表取締役社長兼CEO、および日本旅行パシフィック代表取締役社長兼CEOに就任。人を信頼し、自身も信頼されることをモットーに、「人と人」との密なコミュニケーションを大事にしている。
(「WEEKLY Biz」2013年11月30日号掲載)