〈インタビュー〉5月16日 NY倫理友の会「春のランチョン」ゲストスピーカーに、国連日本政府代表部特命全権大使(次席常駐代表)川村泰久大使

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途上国からの信頼は親世代の努力が結実、慢心せず30年後を考えて一層努力を 

5月16日、毎年恒例のニューヨーク倫理友の会(理事長・リンゼイ芥川笑子氏)主催の「春のランチョン」が開催される。ゲストスピーカーとして登壇する国連日本政府代表部特命全権大使(次席常駐代表)の川村泰久氏にお話を伺った。

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川村大使曰(いわ)く、国連大使の仕事は「日本の国益と国際社会の利益を一致させる」こと。国連の中で日本の立場を主張し国益を守ると同時に、平和・開発・人権という国連の目的に貢献していく。外務省報道官を歴任した川村大使といえども、その責務は容易なものではない。

川村氏が国連大使としてニューヨークに渡った2017年は、北朝鮮の核・ミサイル問題で日本や世界に不安が高まっていた年。北朝鮮が頻繁にミサイルを発射し、その度に国連の安全保障理事会を緊急に開き議論することを繰り返していた。その後1年余り表面的には落ち着いているものの、同国は完全な非核化にはたどり着いていないため、引き続き米国と協力して完全な非核化と平和・安全の確保に向けて働きかけを行っている。

国際社会の縮図と言える国連に身を置く川村大使は、世界の中での日本の立場について「英国BBCが毎年行っている『世界の好ましい国ランキング』で日本は常に1位から5位ぐらいの間にいます。その統計は私の皮膚感覚とほぼ一致すると感じることが少なくありません」と話す。

その一つのエピソードとしてケニアの国連大使が、幼少の時に住んでいた村に日本のJICA(国際協力機構)が来て道路を作ってくれた時の体験談があげられるという。

「日本が作った道路の品質は非常に良く子供たちが学校にも行きやすくなっただけでなく、道の両側に植樹された木が作る木陰が、農作業の休憩や子供の世話をする場所として役立った。このようにしっかりインフラを築きつつも、環境と共生しながら発展すべきことを日本人に教えてもらった」と語ったそうだ。そしてその少女は今やケニアの国連大使となって、日本を陰に陽に支持してくれているという。

「90年代は重点的なODA(政府開発援助)により日本が世界で一番の援助国でした。ODA以外にも教育や貧困削減など日本は世界の平和と発展のために全力を尽くしてきました。その時からの蓄積があるからこそ今日途上国の代表から日本は信頼できる国だということをよく言われるのです。30年前からのわれわれの親世代の努力であり、それが実を結んでいる。だからわれわれもこれに慢心せず30年後を考えて一層努力を積み重ねていかなければならないと思います」と話す。

そのほか韓国による「日本海(Sea of Japan)」の名称変更の主張など、川村大使が国連の場で抱える国際問題は尽きない。イベントでは、日々日本が直面する世界の現実を川村大使の話から感じることができるだろう。

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5月16日に行われる、ニューヨーク倫理友の会春のランチョンの問い合わせは、事務局(212-869-1922/火・木曜)まで。

〈略歴〉かわむら・やすひさ 特命全権大使(国連日本政府代表部次席常駐代表)。1981年一橋大学法学部卒業後、外務省入省。アメリカ、ジュネーブ、インドネシアなどで書記官、参事官等歴任後、2010年ニューヨーク総領事館首席領事、2015年外務報道官、2017年から現職。

(2019年5月11日号掲載)

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