NYの客はちょっとやそっとでは驚いてくれない
〈リアル〉File 2
日本を代表するプロマウンテンバイク(MTB)ライダー有薗啓剛さん。狭き門とされる「シルク・ドゥ・ソレイユ」のオーディションに合格し、ニューヨークで昨冬上演された「ウィンタック」出演のため単身訪米した。
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―日本人としてシルク・ドゥ・ソレイユの舞台に立つのは、どんなお気持ちでしょうか。
有薗 ずっとあこがれてましたから。誰もが立てる舞台じゃないし、それを考えるとすごい舞い上がってしまいますね。今はやっと慣れてきたかなって感じです。ここ(マディソン・スクエア・ガーデン)って4500人、入るんですよ。これだけのキャパでやるのは初めてなんで、ここが満員になった時の迫力ってすごいし、少しお客さんに飲み込まれそうな感じになっちゃう、そういう体験は初めてですね。
―初日の第1回公演は、やはり緊張されましたか。
有薗 そうですね。このシルクに出る前に日本でマッスルミュージカルっていう舞台に4年ほど立ってたんで、ステージに立つということ自体は慣れてると自分では思ってたんですけど…やっぱり緊張しましたね。(笑)
―やはり日本の観客とニューヨーカーの反応って違います?
有薗 こっちのお客の方が目が肥えてると思います。マウンテンバイクのアクロバットって日本だとまだ見た事ない人も多いと思うんですよね。だからちょっとした事ですごいリアクションが返ってくるんですけど、こっちでは、ちょっとやそっとの事では驚いてくれない。(笑)
―僕たち素人の目から見ると、他の演者と比べても有薗さんのパフォーマンスが一番すごかったと思います。
有薗 でも、難易度だけでいうと日本でやってた事の方が難しいんですけどね。
―シルクは世界中からトップのパフォーマーたちが集まって来ます。メンバーとの意思疎通はいかがですか。
有薗 僕が間違った英語をしゃべっても何となく理解してくれるし、世界中から集まって来ているからこそ、ロシアの人はこんな英語をしゃべるなーとか、スパニッシュの人はこういう話し方するなーって彼らも分かってると思うんです。最初の2週間くらいは通訳の人にいてもらったんですけど、後は慣れるためにちょっと通訳さんにも離れてもらって、一人で(メンバーに)入っていこうって。
―一番気をつけている事ってありますか。
有薗 本番で失敗できないというプレッシャーももちろんですけど、それ以上に何より怖いのが、けがですね。他に自転車ができる代わりがいないので。
―見てほしいポイントはどこでしょうか。
有薗 うーん。全体のストーリーも見てほしいし、大掛かりなセットも見てほしいし、生演奏の音楽ももちろん見どころですし…。まあ、一番見てほしいのは僕のバイクなんですけどね。(笑)
―ニューヨークの印象はいかがでしょう。
有薗 忙しい街ですよね。ここにくる前にカナダにいたんで、やっぱり自然があってゆっくり時間が流れるカナダとは違うなあって感じです。
―読者に向けてメッセージをお願いします。
有薗 ぜひウィンタックを見に来てくださいってことですね。で、バイク乗ってるの僕ですよってことをアピールしといてください。(笑)
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〈profile〉 ありぞの・けいご プロのMTBライダー。1978年生まれ。京都府出身。95年から8年連続でマスタークラス全日本チャンピオンに。96年にはエキスパートクラス世界チャンピオンに輝く。世界でわずか25人しか選ばれない国際マスタークラスのライダー。メディアにも出演。
(2009年2月21日号掲載)