「パフォーマーは全てをさらけ出して初めて共感を得られる」
ニューヨーク倫理友の会「春のランチョン」(5月8日開催)にゲストスピーカーとして出演するトシ・カプチーノ氏。ブロードウェーをはじめとする舞台芸術の評論家、エンターテイナー、タレント、プロデューサー・・・さまざまな肩書を持ち、八面六臂(ろっぴ)の活躍を見せるトシさんだが、昨年11月から今年3月に掛けて取り組んだあるショーを通じて、今後一生続けるであろうパフォーマンスの方向性を見つけたという。
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ショーのタイトルは「歌謡シャンソンShow『結婚するってホントですか!?』」。ショーの準備を始めた矢先、10年共に過ごしてきた同性パートナーとの結婚を決意。自身の内面に大きな変化が起きていることを感じながら日々を過ごす中で、この経験自体をショーにすると決めた。自分さえ良ければという“セルフ・センタード”(自己中心的)な生き方から、パートナーを幸せにしたいと心から思えるようになる過程、同時期に起きた事業での失敗や挫折、小説よりドラマティックな自身の体験がありのままにショーに詰め込まれた。昨年11月と12月に2度、ニューヨークのキャバレーショーの老舗「ステージ72」で上演。今年の2月に結婚。3月の日本凱旋(がいせん)公演では、地元福岡で1度、東京で3度の上演を果たし、いずれも大盛況のうちに終了。集まった聴衆は、時に爆笑し時に涙し、のめり込むようにしてショーを楽しんだ。結婚とショーのタイミングが重なったこの時期は結果、トシさん自身にとって重要な人生の転機となった。
パフォーマーは全てをさらけ出して初めて、観客の共感を得られるのだとトシさんは語る。テクニックに走ったり、表面的な芸術性を追求しても、見終わった後、観客の心には何も残らない。「心に逆らっているパフォーマンスをしていると、外に表れてしまいますから」
嫉妬やプライドなど、くだらないと思いながらも消せなかった感情も、だんだん削れてきて、自分との対話ができるようになってきた。人生の悲喜こもごもを歌い上げるシャンソンというジャンルを選んだのは、やっとシャンソンが分かる年になったから。「シャンソンを歌える喜びを今は分かちあいたいんです」
このショーを通じて、生涯にわたり、これからもずっとこのように自身の全てを掛けた表現を続けていくのだろうと直感したという。ドラマチックなエンターテイナー、トシ・カプチーノさんの人生とショーから今後も目が離せない。
次回ショーは、5月30日開催で、詳細は会場ウェブwww.theduplex.com参照。
トシ・カプチーノさんのウェブサイト:www.fujisankei.com/toshicappuccino/
■ニューヨーク倫理友の会「春のランチョン」(5月8日開催)の詳細は212-869-1922まで。
(「WEEKLY Biz」2014年4月26日号掲載)