メトロポリタン美術館近くにある「Lexington Candy Shop」
創業90年の老舗
セントラルパークの東側、メトロポリタン美術館から数ブロックの立地に1925年開業、昨年で90周年を迎えた昔ながらのダイナー「レキシントン・キャンディー・ショップ(Lexington Candy Shop)」はある。
映画の中でしか見られないようなソーダ・ファウンテン(大きなソーダ飲料)や、米国式の軽食堂が流行だった時代にできたこのダイナー。現在は、創設者の孫であるジョンさんが経営を引き継ぎ、今でも元気に営業している。新しいチェーン店が増え続けるニューヨークで、古きよきアメリカの姿を感じさせてくれる貴重な存在で、ポール・マッカートニーさんの家族もこの店の常連だったそう。
創業当時と変わらないメニューを提供
メニューは徹底したクラシカル・アメリカン・スタイル。当時のレシピをあえて変更せず、伝統を守ることに強いこだわりを持っている。
たとえば使用するパン類は、数ブロック先のオーワシャーズ・ベーカリーから仕入れる。このベーカリーも1916年から続く老舗で、保存料や化学調味料を一切使わない。「大量に仕入れることができず、品切れになったら、そこで僕たちもパンを使うメニューは終了するしかない。でも、それで良いんだよ」と笑顔で話すジョンさん。
アイスクリームは1861年創立のフィラデルフィアのメーカーから仕入れる。チョコレートやバニラなどのシロップなどは自家製。バターも混ぜものの無い100%の純正バターを使用。名物の搾りたてオレンジジュースは、注文が入ってから搾る。同じく搾りりたてを提供するレモネードは1杯につきレモンを2つずつ搾る。米紙ニューヨーク・タイムズで3度も「ニューヨークのベスト・レモネード(New York’s Best Lemonade)」に選ばれた。
「家に帰ってきたような」くつろぎの空間
「自分の家族に出すような食事を出したい」とジョンさんは言う。アッパー・イーストと聞いて想像するようなゴージャスさは無く、飾り気の無い家具や皿、シンプルな盛り付け…。でもそこには確かに「家に帰ってきたような」くつろぎと、丁寧に作られた食事がある。
「おいしさだけでなく、この丁寧さと温かさを求めて、常連客が足を運んでくれるのだと思うよ」
最初は家族連れの赤ちゃんとして来店していた子供が10代になり「『初めてのバイト先としてこの店で働かせてやってくれ』と両親に頼まれて、断れなくて預かることもよくあるんだ」と笑うジョンさん。仕事とは何かをここで知った子供たちが大学に入り、立派な社会人になり、家族を連れてまた帰ってくる…。そんな温かいドラマがたびたび見られるのも、同店が長い歴史を持つからだ。従業員もほとんどが20年から30年以上にわたって同店で働き続けているため「いつ帰ってきても同じ顔に会えるというのも、喜んでいただけるポイントのようだよ」と話す。
朝食メニューに、バーガー、シェイクも人気
名物のフレンチトースト、パンケーキなどの朝食メニューは朝食時間帯以外でも食べられる。ハンバーガー類にはアンガスビーフを使用。テレビ番組で何度も「ニューヨークのベストシェイク」と評されたシェイクと共にいただくのが同店流だ。
「ニューヨークは温かみを感じることが少ない街だけど、ここに来ていただけたら家族の温かさと丁寧な食事があるよ。いつでも帰っておいでよ」。アッパー・イーストサイドを訪れるたびに立ち寄りたくなる小粋なスポットだ。
Lexington Candy Shop
【住所】1226 Lexington Avenue, New York, NY(83rd Stの角)
【電話】212-288-0057
【営業時間】月―土 午前7時~午後7時、日 午前8時~午後6時
【ウェブ】www.lexingtoncandyshop.net/