世界初のエコモデル自宅突撃インタビュー
華やかなモデル業界。美しくて綺麗なことは、当たり前。加えてパーソナリティが重視される厳しい世界で、世界で初めて「エコモデル」の地位を確立した女性がいる。
アーティストが犇めく(ひしめく)ブルックリンの中枢部に、彼女の自宅兼オフィスがある。取材場所としてそこを訪れた筆者は、あまりのインパクトの強さに驚いた。まるで、ジャングル、室内の至る所に植物が備えられているのだ。
そんなあっけに取られている筆者一行に、
「500以上(植物が)あるわ。気が付けばこんなに沢山の植物に囲まれて暮らすことになっちゃった。」と、さらりと笑顔で答える彼女こそ、世界で初めて「エコモデル」の地位を築き上げた女性、Summer Rayne Oaks(サマー・レイン・オークズ)である。
そもそも、エコモデルってなに?
エコモデルという言葉を作り上げ、確立させたもは紛れもなく彼女であるが、そもそもエコモデルとは何なのか。
それは、モデル活動を通して環境問題を唱える事である。彼女がこれまでエコモデルとして行ってきた活動を挙げてみる。例えばアメリカで人気のファストシューズ専門店「Payless」とのコラボレーションプロジェクト。安価なプロダクトが売りの同ブランドが、オーガニックコットンやリネン、ヘンプといったグリーンファッションに特化した商品を販売するにあたり、商品のイメージモデルとして、サマー・レイン・オークズを採用。商品のイメージとモデルの理念が一致することで、これまでファストファッションの印象が強かった同ブランドに、グリーンファッションのイメージを植え付ける事を可能にした。
現在では、ファッションモデルとしての活動以外にも、ビジネスコンサルティング、糖質オフの取り組みとして最近新たに始まったという「シュガーレスプロジェクト」等、エコという軸から多岐に渡り活動の幅を広げている。
元々モデル業界とは全く縁のない生活を送っていた彼女。それもそのはず、環境汚染に興味があり、学生時代は水質汚染について専攻していた、ある種の”インテリ”出身なのだ。自身が環境問題について真剣に勉強している際、彼女と仲の良かった周囲の友達は熱心な彼女をよそに、まったく関心を示さなかった。
――――「どうしたら、彼女たちの関心を環境問題に向けることができるだろうか。」
そんな時ひらめいたのが、”ファッション業界”だった。華やかなイメージのファッション業界が持たらす影響力の大きさに、ピン!と来たのだ。
マーケティング方法に長けた業界のビジネスに、興味を持たずにはいられなかった。
「でも、いざ業界に足を踏み入れる決心をした時、正直どうしていいのかわからなかったの。だって、私のバックグラウンドって業界とはかけ離れてるでしょ?」
コネクションや、横の繋がりが特に求められるファッション業界。
何も繋がりの無い彼女が、どうやったら溶け込むことができるのか。悩んだ末に出した答えが”モデル”という職種だった。
整った顔立ちに、すらっとした身体の高身長な彼女。「とっても綺麗なんだから、モデルになるべきよ!」友達からの後押しで、遂にモデルという職業の決断に至る。
自身のモデル活動を通して、例えば友達の枠を超えた多くの人々へ、環境問題を提唱することができるのではないか。
彼女が活動を始めた約10年前は、(今でこそ「サスティナビリティ(持続可能な社会)」が叫ばれているファッション業界だが)ファッションとエコロジーの結びつきなど、多くの人の頭の中には存在しなかった。
そのため、彼女が活動を通して環境問題を提唱する度に、「ああ、なんか可愛い女の子がエコ、エコ、って言ってるよ。」程度にしか捉えてもらえず、その流れで「エコ・モデル」と呼ばれ始めたことに、当初は憤りを感じていたという。
学生時代から水質汚染などの問題に真剣に取り組んで勉強していた彼女だからこそ、「エコ・モデル」と呼ばれることが、いかにも表面的で、簡単に済まされてしまうような気がして、たまらなく嫌だったのだ。
しかし、当時は「エコ」という概念すらなかったファッション業界内で、「エコ」の概念を持ち込んだ彼女の活動のインパクトの偉大さは計り知れない。
そうして手探りで手探りで始まったモデル活動に転機が訪れ始めたのは、実に2002年に活動を開始してから5年後。
2007年頃から徐々に、ファッション業界全体が環境問題を考慮し始め、2009年には、ようやく活動が形になり始めた。
「7年よ、7年もかかったのよ。ようやく全ての事が動き始めたの。そこからかしら、私の活動の需要が増えていったわ。」
モデル業以外にも、著書の執筆活動や、様々な健康に関するプロジェクトのコンサルティングなど、活動の幅を広げる彼女。
「モデル業は、表現方法のひとつよ。環境問題に取り組むための方法の内の一つ。私には執筆活動や(ちなみに今春、健康に関するレシピ本を出版予定)、糖質制限を推進する”シュガーレス・プロジェクト”等、それを唱える方法は沢山あるの。」と、あくまでもモデル業は”手段の一つ”だと捉えている様子。
人々の関心を「環境問題」へと向けるために、業界に囚われず挑戦し続ける彼女。
今でこそ多岐にわたり活動をしている彼女だが、7年という年月が表すように、何事にも新しいことを確立するのは容易いことではないはずだ。
「これまで色々な活動を行ってきたけれど、一番大変だったのは、何もないところに何かを確立させることね。だって、そこには誰が見ても、何も存在しないのだから。存在しないものを、人々の中で存在させるの。想像してみて?わかるでしょ、とっても根気のいることよ。」
好きなことを、仕事に
「正直、私にとってそれ(環境問題とファッション業界を組み合わせること)はとても挑戦だった。同時にとても興味深い取り組みだったわ。初めは全ての事がプロジェクト単位で始まるから、それをビジネスとして確立させるまでには、少なからず時間を必要とするのよ。」
スローライフのススメ!
自身が良いと思ったものを、シンプルに貫き通す。
7年という歳月をかけてまで業界に新たな価値観をもたらした彼女の活躍は、毎日多くの情報に翻弄されている私たち現代人の生活に、一度自身のライフスタイルを見直すきっかけを与えてくれる。
【Summer rayne oaksのこれまでの活動紹介はこちらから】
http://www.summerrayne.net/design/
【プロフィール】
日置愛(ひおきあい)
ニューヨークビズ!新米駆け出しライター。週末の寂しさを埋める為、ファッションストリートスナップサイトをひそかに運営中。www.framenewyork.com
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